災害対策本部における地図利用の現状と課題

DOI
  • 坪井 塑太郎
    公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構 人と防災未来センター

書誌事項

タイトル別名
  • A Study on Current Status and Issues of map use in Headquarters for Disaster Control
  • 熊本県上益城郡益城町を事例として
  • A case study of MASHIKI town KUMAMOTO

抄録

Ⅰ.問題所在と研究目的  <br> 災害発生直後より自治体に設置される災害対策本部では,各種の情報が集約され,首長を本部長とする災害対策本部会議において対応方針が決定される.対応方針の決定の際には,災害対応実務者(本部員)が,被災地の様々な状況を迅速かつ的確に把握し,「状況認識の統一」を図ることが重要である.そのための具体的な方法として,「地図」による情報の可視化が挙げられる.近年では,基礎自治体においても,災害対応が可能な機能を搭載した統合型GISが導入されている事例も見られるが,本研究では熊本地震における益城町災害対策本部での支援業務において,人命救助が最優先となる「初動期」から,生活支援に重点が移行し始める「応急期」に焦点を当て,同時期における災害対策本部で用いられた地図の現状と課題を検討する.   Ⅱ.熊本地震・益城町災害対策本部  最大震度7を記録した益城町では,4月14日の前震により大規模な停電が発生したため,庁舎前の屋外駐車場スペースにおいて災害対策本部が立ち上げられた.しかし,16日未明の本震で庁舎基礎部分に破損が生じたことから,同日中に避難所になっていた保健福祉センターに隣接する児童館遊戯室に災害対策本部機能の移転が行われ,5月2日まで使用された.<br><br>Ⅲ.災害対策本部内の地図と課題<br> 益城町災害対策本部では外部からの本部機能運営支援のため,カウンターパート方式で「福岡県・関西広域連合」の現地連絡本部が設置されたほか,自衛隊,国交省(九州地方整備局・TEC- FORCE)の各リエゾンが設置された.各組織における情報集約・情報共有方法の多くは,「紙地図」の利用が中心であり,同地図の上に透明ビニールシートを用いて,適宜情報が更新される方法が採られた.しかし,避難者の状況については対応方針に資する状況認識の統一が困難であったことから,現地において急遽,地図化支援が行われ,各組織間で情報共有が図られたほか,災害対策本部会議資料として提供された.<br><br>Ⅳ.課題  <br> 災害対策本部における避難者情報は,各避難所担当者からの人数報告が定時に「数表」として集計される.しかし,災害応急期においては,過密状況にある避難所の環境改善や,屋外避難者・指定外避難所の避難者への対応方策が課題のひとつとして挙げられ,救援物資運搬や健康管理等の担当部局との情報共有や連携が必要となるが,そのための資料として必要性が高いと考えられる「避難所・避難者地図」については,現状,作成担当部局や方法が必ずしも明確になっていないことが課題として挙げられる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695489408
  • NII論文ID
    130005279818
  • DOI
    10.14866/ajg.2016a.0_100074
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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