ベトナムドンナイ川流域上流部における土地被覆変化の 表面流出への影響

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  • Effects of land cover change on surface runoff in upper area of Dong Nai river basin, Vietnam

抄録

ベトナムは気候変動によって最も深刻な影響を受ける国の一つだと評価されている。すなわち1m海面が上昇すると、人口の約10~12%が直接影響を受ける可能性があり、経済的損失が10%GDPにのぼると予測されている(Susmita Dasgupta et al. (2007))。また雨季における降水量の増加と海面上昇が組み合わさると、沿岸デルタ地域の40,000km2、メコンデルタ下流部の20,000km2が洪水になるという予測もある(Judy Eastham et al. (2008))。気候変動に適応した水資源の安定的確保はベトナムにおける重要な課題となっている(Philipp Schmidt-Thomé et al. (2015))。ベトナム南部に位置するドンナイ川はメコン川と並び、南部の主要な水資源を供給している。ドンナイ川流域はベトナム東南部の高原から発し、ベトナム南部の主要電源ダムであるチアン貯水池発電所を経て、下流でメコンデルタ下流の支川と合流した後、東海に流出する。<br>メコン川は気候変動による水資源の変動、メコンデルタ上流部のカスケード型水力発電所システムやダム建設などによる下流の河川流量や土砂輸送に対する潜在的な影響に関する論争が続いているが、ドンナイ川流域はベトナムが独自にコントロールできる水資源の供給源であるため、気候変動及び人間活動による水文レジームの変化及びそれへの適応策について検討することはベトナムにおける喫緊の課題になっている。<br>本研究ではドンナイ川流域における水文・気象要素と主要な土地利用/土地被覆の長期変化を検出し、その変化の流出量への影響を解析することを目的とする。<br>ドンナイ川流域内の水文観測所における1993年から2012年の流量データを経験的モード分解(EMD)より変化傾向を検出した。また、気象要素についても同様の方法で変化傾向を検出した。衛星データはアメリカ地質調査所(USGS)で公開されているLandsatの2014年3月8日、2005年1月13日の2時点の画像を利用した。リモートセンシング画像解析ソフトENVIを用い、密林・疎林・多年生植物・農耕地・裸地・水部の5つの主要な土地被覆を分解した。<br>ドンナイ川の流域面積は1,471,350haであり、画像解析から得られた2005年における主な土地被覆は、密林35%、疎林26%、年生植物24%であった。2005年から2014年にかけて、密林・疎林から多年生植物・農耕地への変化が多かった。また一部の疎林は密林になっていた。特に大部の裸地(7%)は疎林・多年生植物・農耕地に転換されていた。その他の土地被覆の面積率は密林33%、疎林16%、年生植物39%になった。 <br>一方、流出量は1993年から2012年まで間に7%を増加した、すなわち毎年0.39%の割合で着実に増加している。土地被覆変化との関係として、流出の増加は多年生植物の拡大及び森林の縮小と相関したことを示した。<br>雨季の月平均降雨量は、ハイランド(標高1,135m以上)で10%、ミッドランド(標高475m~1,135m)で15%、ローランド(標高475m以下)で5%を大幅な増加を見られた。気温も同じく流域内全体的に増加傾向があった。しかし湿度・日照時間・風速・日射量などの気象要素は減少傾向があった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695492736
  • NII論文ID
    130005490071
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100290
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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