群馬県安中市,麻苧の滝の後退速度
書誌事項
- タイトル別名
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- Recession Rates of Asao Fallls in Annaka,Gunma Prefecture,Japan
説明
1.はじめに<br> 滝は河川地形の一つとして日本各地にみられる。滝の後退は,河床の下刻を上流に波及させるため,滝の後退速度を明らかにすることは,河川の河床縦断形の発達速度などを考える上で意義がある。<br> 群馬県安中市に存在する利根川水系碓氷川上流の支流には,麻苧の滝とよばれる滝がある。麻苧の滝は父滝・母滝・曾滝・祖滝・自行滝・小滝・孫滝の7つの滝で構成され,それらの総称である。<br> 碓氷川流域には4段の河成段丘が存在し,各段丘の形成年代や,段丘の標高を明らかにした先行研究がある(須貝,1992)。本研究では,麻苧の滝において最も規模の大きい,高さ31.8 mの父滝を研究対象として,須貝(1992)による先行研究の成果を用いて,父滝の生成時期と後退距離の推定を行い,後退速度を明らかにすることを目的とする。<br><br> 2.調査方法<br> 現地調査により,レーザー距離計を用いて,碓氷川から父滝までの河床縦断形の測量を行い,その結果と安中市都市計画基本図を用いて,父滝上流から碓氷川までの河床縦断形を作成した。<br><br> 3.結果と考察<br> 現地調査により,麻苧の滝を流れる河川が碓氷川に合流する地点の標高は392mであることがわかった。父滝は碓氷川との合流地点から水平距離335mの地点に存在することがわかった。<br> 滝の後退速度を明らかにするためには,滝の後退距離と生成時期を明らかにする必要がある。滝は海面の低下,もしくは海面の変化に伴う侵食基準面の低下により生成されると考えられている。河川の支流に滝が生成される場合,侵食基準面の高さは本流の河床標高となる.本研究のように,碓氷川の支流に滝が存在する場合,合流地点の碓氷川の河床標高が基準面の高さとなり,合流地点が父滝の生成地点となる.このことから父滝の後退距離は335mであると推定される.<br> 現在の父滝上流部の河床縦断形をもとに,父滝生成直前の河床縦断形を復元すると,碓氷川との合流地点の標高は427mとなった。この値は,須貝(1992)による碓氷川の現河床標高392mにおける河成段丘のⅣ面(形成期は20~10ka)の標高(420m)ときわめて近い値となる.したがって父滝の生成時期は1万年前~2万年前であると推定される.これらのことから,父滝の後退距離は335m,後退に要した時間は1万年~2万年となり,父滝の後退速度を算出すると,0.034~0.017m/年という値が得られる.<br><br> 4.まとめ<br> 本研究では群馬県安中市の碓氷川支流に存在する麻苧の滝の中で最も規模の大きい父滝を対象とし,碓氷川沿いの河成段丘の形成期や高度分布に関する既往の研究結果を用いて,後退速度を明らかにするために野外調査を実施した。その結果,父滝の後退距離は335mであり,平均後退速度は0.017~0.034m/年であることがわかった。<br><br> 参考文献<br>須貝俊彦(1992):利根川支流,碓氷川における中期更新世以降の河成段丘発達史.地理学評論,65(A),pp.339-353.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2015s (0), 100291-, 2015
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205695493888
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- NII論文ID
- 130005490073
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可