カムチャツカ半島中央部エッソ周辺の高山帯における土壌生成開始条件

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タイトル別名
  • Initial soil forming process in the alpine zone of Esso district, central Kamchatka

抄録

 日本と同様に環太平洋火山帯に位置するカムチャツカ半島には,多くの活火山が存在し,半島の広い範囲が火山灰土に覆われている.こうした火山灰土は,広域風成塵,一次テフラ,近傍の裸地からもたらされた風成粒子など,複数の給源から飛来した風成粒子から構成されている堆積性の土壌である(山縣・曽根,1997).また,カムチャツカ半島は,高緯度に位置するため,植生に乏しい高山帯の占める割合が広い.現在の高山帯は,比較的新しい時代まで,活発な氷河,周氷河作用のため植生が存在していなかったものと考えられる.したがって,本地域の高山帯における土壌発達の状況を比較することによって,火山灰土の生成開始と地表環境条件との関係について検討することが可能である.そこで本研究では,カムチャツカ半島中央部エッソ周辺の高山帯において,様々な地表環境の地点の土壌断面を観察し,各地点で採取した土壌試料について粒度組成,鉱物組成,粘土鉱物組成,灼熱損量の分析を行った.こうした土壌の特徴と各地点の地表環境条件を比較し,火山灰土の生成開始条件について検討を行った.  調査対象のエッソ地域は,スレディニー山脈の中央部に位置する.エッソ周辺には,標高1000m程度の平坦な溶岩台地が広がり,その中に形成された火山体が,標高1500m前後の稜線をなしている.本地域では,標高1000m前後に高木限界があり,それより上位が高山帯になっている.高山帯の植生は,ハイマツ群落,ミヤマハンノキ群落,草地,裸地が,それぞれ地形や表層地質に対応して分布している.裸地の多くは岩礫地で,崖錐や,現成および化石の岩石氷河からなる. 高木限界の上下で土壌断面を比較すると,高木限界より上の地点では,ほとんどの場所で約2000年前に降下したスーダッチ火山灰(Ks-1)の堆積直前かそれ以降に土壌の形成が開始している.一方,高木限界より下の地点では,多くの地点でスーダッチ火山灰の下位に20cm以上の土壌層が認められた(図1).おそらく,現在の高木限界より上の部分では,約2000年前まで周氷河作用が活発に働いていたが,Ks-1テフラ降下の少し前から気候の温暖化に伴い,斜面が安定化し,土壌の生成が開始したものと考えられる.このとき,土壌の生成と植生の侵入は同時に進行したのであろう.高山帯の中でも,地形や植生に対応して各地点の土壌断面は,異なる特徴を示す.マトリックスに富む堆積物からなる緩斜面では,50?p以上の厚い土壌層が認められる.これらの地点では,KS-1テフラの下位にも数?pの土壌層が認められることから,斜面が安定化した後,速やかに土壌の生成が開始したものと考えられる.一方,岩礫地では土壌層の厚さは比較的薄く,砂質である.また,KS-1テフラが礫の直上にのるのが特徴である.岩礫地では,表面流が生じないため,土壌は風成粒子のみから構成されていて,成長が遅い.また, Ks-1テフラが土壌層の基底にあるのは,このテフラの堆積に伴って大量の砕屑物が一時期に供給され,これを契機に土壌の形成が始まったことを示しているものと考えられる

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695547008
  • NII論文ID
    130007017965
  • DOI
    10.14866/ajg.2011f.0.100156.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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