東北地方太平洋沖地震による茨城県神栖市,鹿嶋市における液状化発生域と砂利採取場分布の変遷との関係

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Correlation between liquefaction areas in Kamisu and Kashima Cities caused by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake and the time-series changes of distribution of gravel pits

抄録

1.はじめに<br><br>本研究では,東北地方太平洋沖地震により発生した茨城県鹿嶋市と神栖市における液状化発生域の土地条件について検討した.本地域の液状化は,かつての砂利採取場を埋め戻した領域や旧湖沼を埋め立てた領域などにおいて多く発生し,構造物の不同沈下や水道管路の被害が多数生じたことが既存研究(鍬田・池尻 2012, 小山・青山 2012, 先名ほか 2012,Tsukamoto et al. 2012)により報告されている.しかし,砂利採取場や各地形区分の液状化発生面積率や,液状化発生域と液状化が発生した旧砂利採取場の造成・埋め戻し年代との関係性などについては明らかにされていない.そこで本研究では,本地域の液状化発生域と砂利採取場分布域の変遷との関係について,多時期の地形図や空中写真を用いて検討した.<br><br>2.調査方法と使用したデータ<br><br>現地踏査(目視観察)とGoogle Earth画像の判読から液状化発生域を明らかにし,GIS上で液状化発生域のポリゴンデータを作成した.本研究では,構造物の不同沈下等の液状化特有の構造物被害や噴砂の存在が確認された領域を液状化発生域とした.また,国土地理院撮影空中写真,国土地理院発行旧版地形図をGIS上で幾何補正したうえで現在の地形図に重ね合わせ,空中写真の撮影年代ごとの砂利採取場のポリゴンデータを作成し,過去の砂利採取場の領域や造成・埋め戻し年代を推定した.地形区分は,基本的に国土地理院発行治水地形分類図と土地条件図に基づいたが,旧河道等の過去の水域に関しては,迅速測図や旧版地形図等も参考にした.<br><br>3.調査結果<br><br>本調査地域における液状化の多くは,過去の水域(鰐川)の干拓地において1970年前後に盛土をおこなった領域,旧湖沼(神之池)を1970年前後に埋め立てた領域,臨海部に1970年代以降造成された埋立地,または砂利採取場を埋め戻した領域のいずれかで発生した.それに対し,後背湿地や砂州・砂丘などの自然地盤における発生は少なかった.それらのような自然地盤(後背湿地や砂州・砂丘)における液状化発生域にみえても,過去に撮影された空中写真を判読すると過去の砂利採取場を埋め戻した領域であることが判明した事例が多くみられた.鹿嶋市においては,一般的に液状化しにくいとされる台地上においても液状化発生域が散在していた.それらの領域のほとんどは,1990年代以降に砂利採取がおこなわれ,埋め戻された領域であった.<br>これらのことから,以下のことが言える.①液状化は埋立地や旧河道などの特定の地形で発生しやすいことから,地形区分に基づいた液状化危険度の評価が行われることが多い.しかし,液状化危険度が相対的に低いとされる地形においても,砂利採取場など人為的な土地(地形・表層地盤)改変が行われた領域では液状化しやすいため,地形区分データのみに基づいた液状化危険度評価を行った場合,液状化危険度を低く見積もってしまう(液状化発生危険度が高い領域が液状化発生に関する検討対象外とされてしまう)ケースが出てしまう可能性がある.日本国内には人為的地形改変が行われた領域は多数分布していることから,それらに関する情報を抽出し,液状化危険度評価に反映させることは重要である.②地形改変の履歴や土地利用変化に関するデータを得るには,一つの時期の空中写真や地図を用いるだけではそれらに関する情報を見落とす可能性があり,可能な限り多くの時期の空中写真や地図を用いて検討・抽出する必要がある.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695585792
  • NII論文ID
    130005490045
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100332
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ