インドにおける日系企業の販路開拓とサプライチェーン構築

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  • How have Japanese companies developed their own outlet channels and supply chains in India markets?

抄録

インドでは,1990年代以降における外資主導による製造業の発展や,2000年代以降におけるIT産業の成長によって,経済発展が継続している.それに伴って,インドの消費市場が順調に拡大しており,様々な消費財において外資系のメーカー,ブランドの参入が盛んである.日系企業においても,自動車や家電だけでなく,食品関係や生活消費財などのメーカーもインド市場に参入している.本研究では,インド市場に参入している日系企業を対象に,インド市場を開拓,拡大するために,どのように販路を開拓しているのか,サプライチャーンを構築しているのか,について調査した.<br>   1.インドの流通構造  インド流通について従来の研究を概観すると,日野(2004)による大手消費財の販売網の分析によると,全国を北部(拠点:デリー),西部(ムンバイ),東部(コルカタ),南部(チェンナイ)の4つに区分することが多く,4つの都市が広域拠点として機能していることや,州ごとに支店が設けられていて,州都の拠点性も高まっていることが指摘されている.荒木(2008)による青果物流通の分析によると,インド国内に青果物の主産地が形成されつつあり,それに伴って青果物流通が広域化していることが明らかにされている.<br> このように,インドにおいて全国的,広域的な流通が構築されつつあることが指摘されているが,インドでは流通チャネルの中で中間流通部門の地位が高く,卸売段階だけでなく小売段階に対してもチャネル支配力がある.一般に,インドではディストリビューターという,メーカーの販売代理店として中間段階を管理する主体が中間流通を支配する傾向にあり,特定の卸売業者,小売業者を系列化している.ディストリビューター,卸売業者,小売業者ともに中間マージンを得ており,そのマージン配分においてもディストリビューターの意向が強く反映される傾向にある.<br> インド流通を地域構造として見てみると,州毎にディストリビューターが存在していて,州をテリトリーとして排他的な営業を展開している.州間の取引についてはスーパーディストリビューターを活用することができるが,広域的な流通過程の全体を一元的に管理することは極めて難しい.さらに,州を超えた物品の販売には中央売上税が課せられる.<br> 加えて,インドでは全国的な交通インフラ・ネットワークの整備も不十分な状況である.ナショナルハイウエイの整備が徐々に進みつつあるが,広大な国土の中で全国スケールのサプライチェーンを機能させることは極めて難しい状況である(ジェトロ編2009).<br>   2.日系企業の販路開拓  上記のように,インドでは州を超えた市場開拓をするのには制約が大きい.中間流通部門をどのように活用するのかが,外資系企業の市場参入において極めて重要になっている.そのため多くの外資系メーカーがインド財閥などと提携して市場参入しているのである.<br> 本研究では,食料品や生活消費財という,比較的低価格商品で,物流や取引のコストがシビアに価格に反映される傾向にある商品に注目し,そうした商品で市場参入を図っている日系企業にヒアリングすることで,日系企業における販売チャネルの開拓状況を明らかにしたいと考える.<br>文献<br> 荒木一視 2008.『アジアの青果物卸売市場—韓国・中国・インドにみる広域流通の出現』農林統計協会.<br> ジェトロ編 2009.『インド・物流ネットワーク・マップ』ジェトロ.<br>日野正輝 2004.インドにおける大手消費財メーカーの販売網の空間形態.地誌研年俸 13:1-25.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695617152
  • NII論文ID
    130005635687
  • DOI
    10.14866/ajg.2017s.0_100234
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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