駒澤大学における外邦図の整理と目録作成

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  • Arrangement of Gaihozu and Publication of Map Catalog in Komazawa University

抄録

1. 外邦図の整理<br> 明治期頃から第二次世界大戦終結までに日本が作製したアジア太平洋地域の地図は「外邦図」と呼ばれている。戦争や植民地経営のために作製された「帝国主義時代の産物」であるが,学界では,環境や景観の変動などを把握するための資料として価値が認められ,研究が進められている(小林編 2009)。<br> 駒澤大学には,多田文男教授(1966-1977年度:専任として在職)より寄贈されたものを中心として,多くの外邦図が所蔵されているが,長らく未整理のままであった。学界や他大学で外邦図の整理や研究が活性化したことに刺激を受け,2004年に大槻を発起人として有志の学部学生が「駒澤マップアーカイブズ」というグループ(いわゆる課外ゼミ)を組織し,駒澤大学地理学科・応用地理研究所などの支援を得て,外邦図の整理をはじめた。学生は,授業の合間や課外の時間を使ったり,大学休業期間中に合宿をして,所蔵外邦図を集計し目録を作成した。このように学生が中心となって作業を進めてきたことが,駒澤大学の取り組みの特徴である。この方法は,業者やアルバイトに依頼するのにくらべて作業速度は遅いが,学生が自主性を発揮でき,教育効果は高いと考えられる。現に,学生が自主的に企画して,駒澤大学禅文化歴史博物館にて2回(2008~2009年),オータムフェスティバル(学園祭)にて4回(2012~2015年),外邦図整理の活動成果を発表する展示会を開くことができた。<br><br>2. 目録の作成<br> 約6年間の作業を経て,2011年3月に『駒澤大学所蔵外邦図目録』(以下,第1版目録)を発行した。この目録では,冊子版のみならず,CD-Rに収録したPDF版も発行したことが特徴である。これにより,目録の検索性を高めるとともに,より多くの研究者に配布できるようになった。<br> 第1版目録作成の作業を通して,駒澤大学が所蔵する外邦図(陸図のみ)は,図幅数・約8,000で,複数枚所蔵している地図があることから,総数は約9,500ということが確認できた。また,中国大陸や朝鮮半島の地図では,等高線などが着色されていたり書き込みがあるものが多数見つかった。これらは,多田文男が調査・研究に使用したものと考えられる。<br> 第1版目録発行後は,これまで同様に学生有志を中心として海図の整理を進めており,2015年度中に第2版目録を発行する予定である。この作業を通して,駒澤大学が所蔵する外邦図の海図は,図幅数,総数ともに約1,000ということが確認できた。海図では,入り江の拡大図など,一枚の紙に縮尺の異なる複数の地図が印刷されていることがある。第2版目録の特徴として,そのような拡大部分の図幅名や縮尺も網羅し掲載したことがあげられる。また,陸図も含めて,駒澤大学所蔵外邦図のうち他大学の所蔵が確認できないものを目録中に示した。これにより,今後,外邦図のデジタル化や補修,研究利用などを進める際に,どの地図を優先して作業すればよいかが確認できる。<br><br>3. 今後の計画と課題<br> 今後の活動として,次の諸点を計画している。(1)さらに相当数の外邦図が本学図書館に確認され,それらの整理を進め,目録を補完する。(2)他大学の所蔵が確認できない地図から優先的にデジタル化を進める。(3)破損や劣化の著しい地図の補修や保管方法の検討。(4)外邦図の研究や教育での利用。特に多田文男の作業跡がある地図は,駒澤大学所蔵外邦図の大きな特徴なので,その利活用が課題である。<br> <br> 本研究は,駒澤大学応用地理研究所の研究プロジェクトの成果の一部である。また,資料収集に際して,駒澤マップアーカイブズ参加学生から多大な協力を得た。<br><br>参考文献:<br> 小林茂編 2009.『近代日本の地図作製とアジア太平洋地域─「外邦図」へのアプローチ─』大阪大学出版会.<br> 駒澤マップアーカイブズ編 2011.『駒澤大学所蔵外邦図目録』駒澤大学文学部地理学科・駒澤大学応用地理研究所.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695835136
  • NII論文ID
    130007018058
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100223
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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