大規模災害発生時の大学キャンパスにおける帰宅困難者数の推計

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  • Estimation of the number of stranded commuters from university campus during a devastating disaster

抄録

1. はじめに<br> 平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震により首都圏では500万人以上の帰宅困難者が発生した.将来,南海トラフ巨大地震などの大規模災害が起こった際には,再び多くの帰宅困難者の発生することが危惧されている.内閣府および東京都による首都直下地震帰宅困難者対策協議会は,東日本大震災を教訓とし,首都直下地震発災時を想定した場合に必要な帰宅困難者対策として「一斉帰宅の抑制」,「一時滞在施設の確保」,「帰宅困難者等への情報提供」,「駅周辺等における混乱防止」,「徒歩帰宅者への支援」,「帰宅困難者の搬送」などを検討し,各主体が帰宅困難者対策を実施する際のガイドラインを作成している(首都直下地震帰宅困難者対策協議会 2012).<br> 今後,こうしたガイドラインを参考にした各主体の取り組みによって,社会全体における帰宅困難者対策の底上げが求められている.しかしながら,各主体が帰宅困難者対策に取り組む上で基礎的なデータとして必要な主体ごとの帰宅困難者数の推計は,必要なデータ収集上の制約や推計に必要な分析上の煩雑さなどから,十分に行われているとはいえない.<br> そこで本報告では,愛知県豊田市にキャンパスのあるA大学という一主体を事例として帰宅困難者数の推計を行ない,個別の主体単位で帰宅困難者数を推計する際の課題を明らかにすることを研究目的とする.なお,本報告では帰宅困難者を「大規模災害発生時にA大学キャンパスに滞在している学生のうち,居住地点までの距離が10km以上あるものと,それらに加えて,距離に関わらず大規模災害発生時に大学に留まることを希望するもの」として扱う.<br>2. 推計方法<br> 推計には,A大学の2012年度在学生6,316名分の居住地点情報を利用する.まず,A大学キャンパスから学生の居住地点までの距離を,直線距離,道路距離,災害時道路距離(土砂崩れによる通行不可を考慮した道路網上の距離)によって計測し,帰宅困難者数の推計結果を比較する.<br> 次に,防災訓練時に実施したアンケート調査結果を利用して,大学に滞在している学生数および帰宅意志を踏まえた推計を行う.大学キャンパスに滞在している学生数は,平日であっても時間帯による変動が大きいこと,また下宿している学生などは近距離であっても大学に留まる事を希望する場合のあることを考慮するためである.<br> 最後に,A大学の他キャンパスを経由地として利用することで,より遠方までの帰宅が可能であると仮定した場合の帰宅困難者数の推計を行う.<br>3. 結果<br> 平日の昼間に大規模災害が発生すると,キャンパスから居住地点までを道路距離で計測した場合,全学生のうち,大学に留まる事を希望する学生を含めて約20%の学生が帰宅困難者となることがわかった.<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205695981440
  • NII論文ID
    130005473244
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_227
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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