民官学の協同による地域課題へのアプローチ

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書誌事項

タイトル別名
  • An approach for regional issues from academia-government-industry cooperation
  • ―地方都市での「まちづくり活動」の経験を通じて―
  • through an experience of community movement activities in local city

抄録

1. はじめに<br>本シンポジウムが企画された出発点のひとつである「地域に関する取り組み」に関するキーワードは,趣旨説明で挙げられているように「地域再生」,「地方創生」をはじめとして様々である。そのなかで,「まちづくり」が主要なキーワードに位置づけられることに異論はないであろう。たとえば西村(2004)は,「まちづくり」のテーマに共通する本質的な点として,「その地域に実際に住んでいる人たちが中心となって,当事者として,自分たちの住む地域にかかわる問題に関して行っている活動である」ことを指摘している。地域住民,すなわち「民」が地域課題を発見し解決に向けて活動するにあたっては,民官学の協同が不可欠であろう。行政上の手続きの円滑化や資金助成などにあたっては「官」が,そして専門的な知識・技術を活用するにあたっては「学」が必要となる。<br>ここで「学」における分野には,都市工学,建築学,土木工学,社会学,芸術学など様々な分野が挙げられるが,「地理学」が「まちづくり」に果たす役割も小さくない。たとえば「まちづくり」に関連した書籍や論文の執筆,自治体の各種委員会における学識経験者としての参加,市民講座における講師としての話題提供,学生参加型学習の一環としての「まちづくりイベント」への参加などが挙げられる。そこで本発表では,発表者による地方都市での「まちづくり活動」の経験を通じて,民官学の協同による地域課題へのアプローチについて検討する。<br><br>2. 「まちづくり」における地理学の役割<br>「まちづくり」における地理学の役割として,ここでは特に次の三点を強調して挙げたい。第一は,「まちづくり」の対象となる地域の地理的特徴を明らかにする点である。「まちづくり」はその地域固有の自然や文化,歴史をはじめとした地域特性が色濃く反映され,全国画一的に進めることはできない。地域の実情を知り,その背後にあるメカニズムを把握することが必要である。第二は,「まちづくり」の活動となる地域(場所,空間)の意味を明らかにする点である。「まちづくり」には,活動する人々の場所への愛着や誇りが不可欠である。したがって,場所や空間が持つ意味を明らかにすることで,地域住民による「まちづくり」を行う場所や空間へのアイデンティティが再確認および涵養され,「まちづくり」に向けた意識の共有や明確化が可能となる。第三は,「まちづくり」の対象となる地域の空間,場所といった要素およびそのつながりを空間的視点から整理することである。「まちづくり」は現実の場所や空間において行われるが,その際,アクター・ステークホルダー,場所,空間といった様々な要素の位置関係,近接性によって「まちづくり活動」は推進されたり制限されたりする。ここに挙げた三点以外にも,「まちづくり」の進展プロセスにおいて,それぞれ地理学が寄与できる点は多々ある。<br><br>3. 「まちづくり活動」の経験を通じた地理学の役割―愛知県豊橋市の事例<br>本発表で事例とする愛知県豊橋市は,歴史的に東三河地域の中心地として位置付けられてきたが,近年は中心市街地における商業機能の空洞化といった各種の課題がみられる一方,高層マンション立地による一部地域での人口回帰や再開発事業の実施がみられる,典型的な地方都市である。発表者は学生参加型学習の一環としての立場も踏まえながら,中心市街地・商店街で開催されているアートイベントやエリアマネジメント関連会議をはじめとした各種の「まちづくり活動」に関わる形で地域調査を実施しており(駒木2016),それらに関連したまちあるきの実施なども担当している。そして,こうした調査や活動を通じて,最終的には場所や通りが持つそれぞれの役割を考え,「地域」と「住民」とを橋渡しする「まちづくりプラットフォーム」の構築に寄与することを目標としている。発表当日はこれらの経験を前述の「まちづくり」における地理学の役割に照らし合わせながら,整理,考察したい。<br><br>参考文献<br>駒木伸比古 2016.豊橋市中心市街地における市民主導型まちづくり活動の展開―「とよはし都市型アートイベントsebone」を事例として.地域政策学ジャーナル 5(2): 19-35.<br>西村幸夫 2004.『まちづくり学―アイディアから実現までのプロセス』朝倉書店.<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696000512
  • NII論文ID
    130006182665
  • DOI
    10.14866/ajg.2017a.0_100066
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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