内モンゴル自治区における近年の植生変動とその要因解析

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  • Vegetation change and its causal analyses in recent years in Inner Mongolia

抄録

<br><br>はじめに<br><br>中国、内モンゴル自治区は黄砂の発生源として注目され、土地利用・土地被覆に関する多くの研究がある。衛星データを用いた解析では1980年代から1990年代にかけてNDVI(植生指数)が増加した地域が減少した地域より多かったことが明らかにされている(額尓徳尼2009)。中国では1990年代から持続可能な発展を目指し、2000年以降は砂漠化・環境問題を重視するようになった(梁2010)。2000年以降、内モンゴル自治区では、生態移民、退耕還林還草、新三牧などの環境政策が実施されているが、一方で内モンゴル全域が西部大開発の対象地域となっている。よって、近年の土地被覆変化は大きいと考えられる。<br><br>本研究は近年、特に2000年以降の内モンゴル自治区における植生変動とその要因解析を行うことを目的とする。<br><br>対象地域<br><br>内モンゴル自治区は、中国の北部に位置し、全域の面積は、118.3㎢である。気候帯は、乾燥・半乾燥地域が大部分を占める。年降水量は、50㎜から400㎜ほどであるが、東部で400㎜以上と多く、西部では50㎜を下回る。森林は主に東北部の大興安嶺山脈に位置し、ステップは主に中部地域のシリンゴルと東部地域のホルチンに集中し、沙漠は主に西部に位置している。<br><br>使用データ<br><br>・SPOT VEGETATION (1999年~2012年)   <br><br>フランスが打ち上げた衛星に積まれた地球観測センサーである。青、赤、近赤外、中間赤外の4バンドを持っている。<br><br>・内蒙古統計年鑑(1999年~2012年)<br><br>内蒙古の社会、経済および科学技術の発展状況を表す基本データが収録されている。<br><br>・世界気象資料 (1999年~2012年)<br><br>世界各地の地上気象観測データを統計処理した日統計値と月統計値、累年平均値地点情報および解説が収録されている。<br><br>・ランドサットデータ TM、ETM<br><br>米国NASAが打ち上げた地球観測衛星で、可視から熱赤外まで複数のバンドを持っている。<br><br>・中華人民共和国植生図(1:1000000)<br><br>1980年代から1990年代中期の植生分布状況を示す。<br><br>手法<br><br>10日コンポジットで作成されているSPOT/VEGETATIONの正規化植生指数NDVIを用いて、ピクセル毎に一年36旬の最大NDVI(NDVImax)と年間積算値(ΣNDVI)を計算し、Mann-Kendall rank statistic法を用いて1999年から2012年の間のトレンド解析を行った。トレンド解析結果の検証にはランドサットデータを用いた。また、植生増減要因の検討には内蒙古統計年鑑を用いた。<br><br>結果とまとめ<br><br>NDVImaxとΣNDVIのトレンドは概ね同じ分布となった。NDVI増加地域は西のオルドス高原の東部、ホルチン周辺地域、東北のフルンベール地域である。NDVI減少地域は巴彦淖尔市の烏拉特後旗と烏拉特中旗に多く分布していることがわかる。<br><br>NDVIトレンド図に中華人民共和国植生図を重ね合わせた結果、NDVIが減少傾向にある地域は荒漠からステップ地域に変わる地域であることが分かった。荒漠地域が解析期間の14年間で拡大している可能性を示唆している。<br><br>NDVI増加傾向を示したオルドス高原とホルチン周辺地域について統計データと併せて検討した結果、これらの地域では植林が非常に活発であった。また部分的に耕地面積が増加しており、灌漑面積も増加していることが確認できた。つまり、これらの地域のNDVI増加傾向は植林、耕地面積の増加、灌漑面積の増加によるものと考えられる。<br><br>東北部のフルンベール地域のNDVI植生増加地域の植生カテゴリーを検討した結果、沼地(湿地)でNDVIが増加していることが分かった。同地域をランドサットデータで判読した結果からも明瞭な植生増加があることが分かった。他のホルチン地域、オルドス地域と巴彦淖尔市のNDVI減少地域についてもランドサットデータで確認した結果同じ結果が得られた。よって、広域の植生変動解析の結果はより一層信頼性が上がると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696054528
  • NII論文ID
    130005473532
  • DOI
    10.14866/ajg.2013a.0_100090
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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