和歌山県の人口が継続的に減少し始めるまでの過程についての分析

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  • An analysis on the process until the population in Wakayama prefecture began to decrease continuously

抄録

Ⅰ はじめに<br>日本社会は人口減少期に突入した.各種の行政需要への対応など人口問題の影響を大きく受けるのは地方自治体であることから,国立社会保障・人口問題研究所は都道府県や市区町村の将来推計人口を公表し,それを活用して各自治体は「地方版総合戦略」を策定した.このように地域人口に対する関心が高まる一方,地域人口の変動過程について,他地域との関係も考慮しながら詳細に検討した例は意外に少ない.将来推計人口の精度を高めるためにも,人口変化にみられる地域的な特徴を検証する必要があろう.以上を踏まえ,本稿では,和歌山県を対象として,継続的な人口減少が始まるまでの人口変化の地域的展開を検証する.資料は『住民基本台帳人口要覧』各年版である。また,和歌山県の人口減少は1990年代後半に本格化したことから,若干の余裕をみて2004年(2003年度)までを対象とし,分析単位は平成の大合併前の市町村とした.<br><br>Ⅱ 和歌山県の人口動態<br>和歌山県全体の人口動態を整理した図1をみると,和歌山県では1980年代半ばまでは純流出による人口減少がみられたが,1980年代後半に純流出が縮小し,1990年代前半に純流入に転じた.しかし,1990年代半ばに純流入が止まって純流出に転じるとともに,それまで増加を記録していた自然動態も減少に転じた.それ以降,自然減少が次第に拡大するとともに,一定の純流出が継続するようになり,両者が合わさって2015年には1万人近くの人口減少を記録するに至った.なお,和歌山県の人口が継続的に減少し始めたのは1996年からであり,また自然減少を記録し始めたのは1997年からである. <br><br>Ⅲ 地域別にみた和歌山県の人口動態<br>和歌山県下の市町村を対象として1980年から2004年までの25年間での人口増加率を示した図2をみると,県北部の紀ノ川沿いに人口増加の大きい,もしくは人口減少幅の小さい市町が多いのに対し,それ以外の地域では内陸部での人口減少が特に大きく,南部でも減少幅が大きい.そこで,和歌山県下の市町村を「紀ノ川沿い」と「その他」に区分し,それぞれの市町村の人口変化の内訳を合計して図示したものが図3である.図3から以下のことを指摘できる.まず,1980年代はその他地域で純流出が大きい一方,紀ノ川沿い・その他地域ともに自然増加を記録していた.1990年代前半になると,紀ノ川沿いで自然増加が継続したことに加えて大きな純流入を記録し,県人口が増加に転じた.しかし,1990年代半ば以降,紀ノ川沿いが純流出に転じ,それが県人口の減少につながった.加えて,1990年から始まったその他地域での自然減少が拡大するとともに,紀ノ川沿いも2002年から自然減少に転じ,これらが合わさって県人口の減少を大きなものにしてきた.これらの点から,和歌山県の人口が継続的に減少し始めた重要な過程として,紀ノ川沿いで純流入が純流出に転じたことと,時間差を有しながらも全県的に自然減少が拡大したこと挙げることができる.<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696067200
  • NII論文ID
    130006182651
  • DOI
    10.14866/ajg.2017a.0_100135
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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