平成28年熊本地震に対する東北大学病院DMATの活動

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タイトル別名
  • Activity of Tohoku University Hospital DMAT (Disaster Medical Assistance Team) for The 2016 Kumamoto Earthquake

抄録

1.  はじめに<br> 2016年4月16日午前1時25分に熊本地方で発生した震度6強(のちに7)の地震は日本DMAT(災害派遣医療チーム: Disaster Medical Assistance Team )の自動待機基準〈東京都23区震度5強以上または他の地域で震度6弱以上〉に該当した。午後4時3分、当院を含む東北ブロックDMATに派遣要請が発出された(日本DMAT第2次隊)。 <br>2.  航空自衛他松島基地出発〜竹田市医師会病院到着<br> 4月16日午後7時に松島基地を出発する輸送機に搭乗可能な東北ブロックDMAT8チームが松島基地に参集しブリーフィングを行った。東北ブロックチームに課された任務は「阿蘇地域を大分県側からサポートする」ことだった。C-1輸送機で航空自衛隊築城基地(福岡県)に向け出発、築城基地からは自衛隊車両にて参集拠点・活動拠点本部となった大分県竹田市の竹田市医師会病院へ移動した。4月17日午前2時50分現地着。 <br>3.  活動開始:南阿蘇村での情報収集<br> 午前3時よりミーティングを行い、午前6時より活動開始。大分県竹田市から熊本県南阿蘇村までは県境を越えて乗用車で1時間30分を要した。分担エリアの避難所を回るが、日中は避難者が外出しており何人避難しているか不明、指定避難所建物が損壊し住民が移動している、様々な規模の自主避難所が出来ている、等の情報を得た。同日夕方の本部ミーティングにおいて報告。本部からは、引き続き4月18日も避難所情報収集を行う件、阿蘇市阿蘇医療センターをサポートし拠点化する件、また南阿蘇村の老健施設に利用者があふれスタッフが疲弊している件などについて情報提供があった。 <br>4.  特別養護老人ホーム「陽ノ丘荘」搬送ミッション<br> 前夜のミーティング情報に基づいて、当院DMATに特別養護老人ホーム「陽ノ丘荘」での情報収集、状況に応じて避難搬送ミッションが割り振られた。陽ノ丘荘は崩落した阿蘇大橋から約2km, 土砂崩れの発生した火の鳥温泉から約1kmの地点にあり、周囲は土砂崩れが頻発していた。通常定員100名の施設に近隣からの避難も含め140名の高齢者が居住し、通常定員の1/3~1/2のスタッフで介護を行っていた。ライフラインはガス(プロパン)を除き途絶、発熱者あり、特別食・薬剤も間もなく底をつくが調達の目処は立っていない、スタッフ数が少ないため疲労の色が著しくオムツ交換・体位交換もままならないなど、数日内に危機的状況に陥る可能性が高かった。施設責任者らと相談し、病状の重篤な入居者を医療機関へ搬送することにした。搬送候補者には100歳を越す超高齢者、認知症・寝たきり入居者があがり、うち家族の同意の得られた15名を大阪府・山口県の緊急消防援助隊救急車で約50km離れた竹田市医師会病院へ搬送した。15名の搬送に計画立案から搬送終了まで約3.5時間を要した。活動を本部ミーティングで報告、翌日の全体活動計画に老健施設の調査が盛り込まれた。 <br>5.  白水庁舎での災害医療コーディネート会議〜帰還<br> 4月19日午前9時より南阿蘇村白水庁舎で現地医師主導による災害医療コーディネート会議が開催され、席上において陽ノ丘荘ミッションについて報告し、地元保健師に福祉介護施設の情報収集を依頼した。昼前にレンタカーで南阿蘇村を福岡空港に向け出発。同日夕方、民間機で仙台空港へ向け出発。午後9時仙台空港到着。病院長に帰還報告しチームを解散した。 <br>6.  できたこと<br> ①東日本大震災の経験を活かし福祉介護施設への早期医療介入を行うことができた。②南阿蘇村災害医療コーディネート会議に関与できた。 <br>7.  できなかったこと<br> ①確実な通信手段の確保(一時、衛星携帯もつながらなかった)。②周囲福祉介護施設へのアプローチ。③アナログ式情報集約からの脱却、など。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696146688
  • NII論文ID
    130005279647
  • DOI
    10.14866/ajg.2016a.0_100015
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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