観光型レンタサイクル利用による回遊行動の実態

書誌事項

タイトル別名
  • Patterns of tourist behavior by rental cycle use
  • 長野県安曇野市を事例に
  • A case study in Azumino, Nagano, Japan

説明

農村地域は,比較的広い空間スケールで観光地域として成り立っている場合があり,点在する観光対象間の移動に,徒歩以外の端末交通手段を利用することがある.レンタサイクルは,環境負荷の抑制や利用者の自由度の面で注目されており,多くの観光地での導入事例がみられる.しかし,レンタサイクルを利用した観光行動の実態については,研究調査が不足している.本研究は,観光型レンタサイクルを利用する観光客の行動実態を明らかにし,観光施策のための基礎的知見を提供する. 長野県安曇野市穂高地区を調査対象地とし,2011年7月11日から14日までを調査期間とした.穂高駅前の代表的なレンタサイクル店で,観光客にGPSを配布し,GPSを回収後,同時に質問紙調査を行った.有効なGPSは39グループ,質問紙は95人分であった. GPSのログデータをもとに,まず基本的な行動量を求めた.所要時間は主に50 分間から100 分間のグループが多く,移動距離は5km以上10km以下のグループが多い.そして,レンタサイクルから降りるなどして歩行していた時間は50分から100 分以内のグループが多いが,より長い時間歩行するグループも多数ある.自転車による移動時間は主に0 から50 分間以内のグループが多い.歩行時間は自転車利用時間に比べて多く配分されていた. 次に,GPSのログデータをGISで分析し,空間利用や行動パターンを可視化した.まず,観光客の行動の種類の違いを考慮した空間利用把握のために,異なる速度をもつログの点分布をデュアルカーネル密度推定によって可視化した.歩行による移動が主な空間は,安曇野市の3つの主要観光施設付近であった.これらは観光客の主要な目的地であり,回遊行動上での重要な結節点あるいは折り返し地点である.自転車での移動が主な空間は,穂高駅東側でとりわけ高かった. より詳細な行動パターン把握のため,GPSログデータをArcGISで電子地図上に2次元や3次元で表示し,目視で移動軌跡の類型化を行った.その結果,3つの行動パターンを抽出した.観光型レンタサイクルを利用した観光客の回遊行動は特定の型にはまっているものが多かった.この要因としては,観光客の距離や方位など空間的知識の不足と,一部の観光施設への認知の偏りの2つの問題が関係している.前者によって推奨コースの紹介というサービスの常態化につながり,後者によって一部の観光施設への到着が主目的化し,結果として観光客の回遊行動を規格化している.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696291456
  • NII論文ID
    130005456777
  • DOI
    10.14866/ajg.2012a.0_100001
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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