秋田県における集落営農化の進展と地域農業の変化

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タイトル別名
  • -Changes in Regional Agriculture by Development of Community Farming in Akita-
  • 横手盆地の稲作農村を事例に
  • -A Case of Tow Rice-cultivating Villages in Yokote Basin-

抄録

2005年に決定された品目横断的経営対策において集落営農が担い手として政策に組み込まれ、それ以降比較的農業労働力の残存している地域でも集落営農の形成が進んだ。こうして設立された集落営農は、従来の集落営農とは異なる性格を持つと考えられる。<br>  本研究では、集落営農が設立された集落においてその前後で農業がどのように変化したのかを明らかにし、政策推進によって形成された集落営農の地域農業における役割について考察する。<br>  研究対象地域は集落営農数の増加が特に顕著に見られた秋田県とした。その中で集落営農を組織主体型と個別経営維持型に大別し、それぞれの事例として横手盆地の2集落をとりあげた。<br> 組織主体型の事例集落では都市部への近接性の高さにより1970年代から郊外化・工業化が進展し、混住化が進んできた。そうして他産業に農業労働力が流出していく中で、兼業による粗放的な水稲単作の農業構造が形成され、2000年代に入って高齢化と後継者・担い手不足が顕在化した。集落営農化については、法人の代表者と常勤職員2名が中核となり、外部からの雇用労働力を利用して農業を行うという形になっている。<br>  個別経営維持型の事例集落では工業化の影響は小さく、兼業化は進展したものの恒常的勤務との兼業が主になったのは1990年代以降であった。そして、1980年代後半に生産調整への対応と農業収入の向上のために水稲に加えてネギなどの野菜を栽培する農家が増加した。この集落では、2005年時点で比較的若い農業者が多く、集落営農化に先立って水稲の栽培協定や野菜の共同栽培が始められていた。集落営農化については上記の活動に加えて転作田の団地化や一部機械の共同利用なども行われるようになったが、基本的には個別農家の維持されている。<br> 組織主体型の事例は労働力の不足への組織的な対応という面で従来の集落営農と同様の性質をもつとみられる。一方で個別経営維持型の集落営農については、現状では労働力の不足が深刻ではないといっても将来的には農業従事者の高齢化と減少が進むことから、段階的に組織主体の組織へと移行していくと考えられる。つまり、個別経営を継続したい農家との軋轢を避けつつ、労働力不足が深刻になる前に将来の共同化や経営集約への下地を作ったといえる。しかし、組織としての活動が小さいものは自然消滅する恐れもあり、今後の動向が注目される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696409600
  • NII論文ID
    130005457132
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100246
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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