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Honeybee as a social organism
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- NAKAMURA Jun
- Tamagawa Univ.
Bibliographic Information
- Other Title
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- 「社会」を単位に生きるミツバチ
Description
ミツバチは,数千から最大6万匹ほどの社会集団を形成するが,社会性昆虫を扱う分野では,この社会単位を「コロニー」という.コロニーは1匹の女王蜂と,繁殖期には全体の10%ほどの雄蜂,そして残りはすべて働き蜂で構成される.コロニーの営みは,さながら多数の細胞で構成される動物一個体の営みに似ており,このため「超個体」とも呼ばれる.ちなみに,マルハナバチやスズメバチとはちがい,年間を通じて単独になるフェーズを持たないので,現存のミツバチは,およそ500万年前からコロニーという単位を崩したことがないことになる.コロニーの大部分を占める働き蜂は,女王蜂と同じ雌で,いずれも受精卵から生まれる(ミツバチの性決定においては,受精卵が雌,未受精卵が雄となる).働き蜂の母親に当たる女王蜂は,2~3年の一生の始めに10~16匹程度の雄蜂と交尾して精子を得て,これを体内に蓄えて,その後,一生の間,働き蜂や自分の後継となる女王蜂になる受精卵を産むたびに少量ずつこの精子を使い続ける.女王蜂の寿命は,通常2~3年であるが,実際には精子を使い切れば寿命となる.冬期には,コロニーとしての活動レベルも下がるので,6か月程度まで働き蜂の寿命は延長するが,年間の大半では短く,これを女王蜂が一日に産む1000個ほどにもなる卵によって補っている.つまり,ミツバチのコロニーは新陳代謝の高い状態を維持して檻,働き蜂を次々と更新して,若返りを図っている.働き蜂が3万匹ほどのコロニーでは,一日に1000匹死んで1000匹生まれることでコロニーの状態は安定的に維持できる.女王蜂が,巣の外で多数の雄蜂と交尾をすることで,生まれてくる働き蜂は,異父姉妹の集合となる.その結果,働き蜂はコロニーの中での遺伝的多様性を確保し,これが,外界の刺激に対して,一律に動くのを回避して,刺激の種類や程度に応じた最適な調節を実現している.一般的には血縁選択,つまりは母娘や姉妹の協力関係が社会進化の推進力とされるが,完成されたミツバチの社会は,血縁よりは遺伝的多様度に基づく,コロニー活動のための多機能性を優先している.遺伝的多様度を働き蜂の横軸方向の広がりとすると,縦軸方向は,春や秋にはわずか30日ほどしかない個々の働き蜂が持つ時間となる.ミツバチは日齢に伴う生理変化による分業によって,女王蜂に一任する産卵以外の,育児,食糧の加工と貯蔵,採餌などのすべての活動を分担している.巣の外で,害敵などに遭遇する外勤活動(主として採餌)は,このため一生の最後の分担となっている.ミツバチのコロニーは,年間で120 kgの花蜜と20 kgの花粉を花に頼る.これを集めるために,ダンス言語を用いるなど,昆虫としては非常に高度に発達した採餌戦略を持つ.また,ハナバチ類では最も高い定花性を示し,連続的に同じ花を訪れ,これが植物の側から見れば受粉の効率を高める結果となる.大量の資源を植物に頼る代償として,ミツバチは植物の繁殖を助けていることになる.このような高度な社会が維持できるのは,一方では,個々の働き蜂の高い能力に大いに依存しており,また,私たちからは想像しにくいが,これといった命令系統を当てにしていない社会構造と,外界の資源環境との明確な融合によっている.本シンポジウムのテーマは「飼育」である.ミツバチは,確かに法的には家畜に分類されているが,コロニーとして高度に自立していて,同時に資源環境とは切り離せない生物であり,実は字義通りの「飼育」は困難を極める.人間の作業としての飼育は,実際には,人間が与えるストレスを,飼育に伴う保護で補っている状態を指す.その点で,生産養蜂など,ミツバチとの共存的な関係を維持するためには,私たちもミツバチが利用する環境を考えることから始めなければならないのかも知れない.
Journal
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- Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers
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Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2014s (0), 100299-, 2014
The Association of Japanese Geographers
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Keywords
Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205696438016
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- NII Article ID
- 130005473849
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed