幕末蝦夷地陣屋の建造物復原の試みと課題

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タイトル別名
  • Experimental Study on Reconstructions of Fortified Camps in Ezo Province at the End of Tokugawa Shogunate
  • その建築史からの検討
  • from the View Point of Architectural History

抄録

幕末、北海道各地に設けられた蝦夷陣屋については、ながく建築史研究の対象になってこなかった。一部の史跡で行われた復原検討も整備のための個別的検討で、蝦夷陣屋全体を俯瞰的に見渡した体系的な研究は見当たらない。研究を困難にしてきたのは、そのほとんどが明治初年まで破却されていて現存遺構がないこと、研究の材料となる史料の収集・整理が進んでいなかったことによる。本科研の調査は、蝦夷陣屋に関する史料、とくに絵図資料について、全国各地に資料を収集・整理し分析を試みており、建築史の領域においても、体系的な研究が可能となってきている。ここでは、現時点は資料収集段階にあり、予備的報告にはなるが、蝦夷陣屋の建築史的研究の可能性と課題をまとめておきたい。 施設類型においては、元陣屋、出張陣屋、台場、狼煙場、奉行所、場所会所などの類型別の検討が可能であった。配置は囲郭の形態に影響されるが、基本的に一重あるいは二重のロノ字型/並行型などに分類された。そのさい、純軍事的な配慮によるレイアウトとともに、板塀を併用しながらオモテ動線とウラ動線(生活関連)の分離を試みている。建造物や工作物の類型は本陣、関連の役宅、宿舎、各種倉庫、練兵施設関連の小建造物等に分けられ、切妻の式台玄関付の本陣、中廊下型と片側縁型の棟割長屋など、類型ごとの特徴がみられた。また、何件かの標準設計があり、現場の敷地形状や材料供給の状況に会わせて設計変更が行われた可能性もあった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696583808
  • NII論文ID
    130005457026
  • DOI
    10.14866/ajg.2012a.0_100170
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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