中国における「分裂型都市化」と「空城」の出現

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  • Split-type urbanization and the emergence of empty town in China

抄録

1. はじめに  1949年新中国建国から70年代末まで、保守な社会主義計画経済体制、「上山下郷」などの政治運動の影響を受け、閉鎖的な環境下、中国都市の発展はほぼ停滞した。1978年改革開放以来、対外開放政策を実施する同時に、対内改革の試みも取り組んできた。その結果、大都市への人口集中、また都市間の人口移動も活発するようになった。更に、1992年以降、社会主義市場経済へ移行する過程で、中国の都市において、急激な人口増加を成り遂げ、2014年現在、人口1000万人を超える大都市が幾つ登場してきた。近年、中国における都市化の進行や、住宅市場の自由化によって、大都市に限らず、地方中小都市への人口集中も目立つようになった。多くの流入人口の受け皿とした都市住宅の需要が高まり、旧市街地の再開発や、周辺部の農村を編入による市街地の外延的拡大という一般的な開発パターン以外には、既存の市街地のすぐ横に、新しいまちを開発するまでになって、いわゆる「造城運動」が盛るとなった。但し、これらの新たな作ったまちは住宅ビルが林立しているにもかかわらず、住民の影が見当たらない「空城」となった。これら「空城」の出現は学術界における議論がまだされていないが、中国の都市化を理解する際に、十分に研究する必要があると考えられる。 2. 研究目的   本研究は、「空城」発生のメカニズムと形成の経緯によって、類型化することを図りたい。筆者はこの「空城」を形成することを発展を先行する開発と呼ばれる「分裂型都市化」という論説との関連性を検討しつつ、さらに「空城」が形成する制度的な要因に導きたい。本来「分裂型都市化」は成功事例として挙げたことにした。いわば、国家戦略である上海浦東新区の開発によって、都市の国際地位の飛躍的な上昇に伴いヒト、富、情報は上海に集まるようになった。 3. 結論   「空城」形成の理由として以下の三点が考えられる: ①「城郷二元化」の国土構造による農村人口が都市への自由流動を障害し、また都市に流入した農村人口の収入や待遇などは都市人口との格差が大きく、都市での住宅を負担する経済力がない;②1978年から住宅制度改革を提起したから1998年7月に至って、福利住宅分配制度が終結され、住宅分配貨幣化への移行を果たした。その結果、不動産市場の自由化により、利益を追求した開発行為により過剰的な開発が発生した;③1994年分税制改革以来、地方政府は財政を確保する手段として、土地資源を手放し、「商品房」(自由売買できる住宅)の開発を通して、地方政府収入の重要な財源となった。住宅需要と供給の不均衡は、中国の都市における潜在化している問題となり、結果として「空城」という形で現れた。以上の考察を通して、近年の中小都市における「造城運動」が意図的に、質的には都市化の本来の姿と異なり、地方政府が主導する投資的な開発行為となる成分少なくはない。   本研究を通して、過去30年中国都市住民の居住空間の変容と再編を踏まえながら、社会主義体制下土地国有化を前提とした中国の都市構造の形成を解明することにあたって、重要な意義があると考えられる。 <br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696642304
  • NII論文ID
    130005473810
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100262
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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