UAVによる超高解像度画像を用いた海岸林の実態把握の試み

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タイトル別名
  • A study on the coastal forest condition using high-resolution images taken by UAV
  • 宮城県岩沼市を対象に
  • A case study in Iwanuma City, Miyagi Pref.

抄録

1 はじめに<br> 2011年3月の東北地方太平洋沖地震による津波により東北地方から関東地方にかけての海岸林は甚大な被害を受けたが,津波の高さや微地形の影響などにより残存した海岸林もある.残存海岸林では,被災後1年以上経ってから枯死する樹木もみられるため,その動態を捉えることは,海岸林の再生を計画する上でも重要である.本研究では,近年,技術革新が進むUAV (無人航空機)を用いて地上解像度約3cmという超高解像度の画像を取得することにより残存海岸林の実態把握とオブジェクトベース画像解析による樹種判別を試みる.<br><br>2 現地調査の概要<br> 対象地域は宮城県岩沼市沿岸域の長谷釜地区とした.この地区は,石川・大澤(2013)の現況調査により仙南地域で最も多くの残存海岸林が確認されている.使用するUAVは,(株)情報科学テクノシステムのRobinというシングルローターの無人ヘリコプターで,2013年6月30日,7月1日の早朝に高度約150mから撮影を行った.オーバーラップ率約80%,サイドラップ率約50%のステレオ画像を約1600枚取得した.また,2013年8月に植生調査を行った際に,樹種判別のグランドトゥルースデータとしてクロマツ,アカマツの位置を計33本分取得した.<br><br>3 取得データの概要<br> 取得したステレオ画像を写真測量ソフトで処理し,オルソモザイク画像(図1 左)とDSM(数値表層モデル)を作成した.オルソモザイク画像を目視すると,枝葉を細かく確認することはできないが,樹冠の形態的特徴ははっきりと読み取れ,色彩情報と合わせることで,単木単位での樹種判別ができる可能性があることが分かった.次に,DSMは楕円体高となっているので,ジオイド高を減じてDSM (標高)を求めた.DSM (標高)から基盤地図情報の5mメッシュDEMを減じることにより,残存海岸林の樹高を推定した(図1 右).単木単位の樹冠形状を捉えることはできなかったが,海岸林の残存状況を定量的に把握できることが明らかとなった.<br><br>4 オブジェクトベース画像解析による樹種判別<br> 残存海岸林の一部を対象(図2 上)にオルソモザイク画像とDSMを入力データとしたオブジェクトベース画像解析による樹種の自動判別を試みた(図2 下).クロマツとアカマツのみを対象として検証を行ったところ,判定精度は84.2%であった.その他の樹木や陰影が大きな誤差要因となるため,現状では,樹種の自動判別による単木単位での分布図作成は困難であることがわかった.可視域の色彩情報のみでの解析には限界があるため,自動判別の精度向上のためには近赤外域のデータや樹冠形状を単木単位で捉えたDSMなどの新たな情報の追加が必要と考えられる.<br><br>参考文献 石川幹子・大澤啓志(2013): 仙南平野海岸林調査報告書, pp149.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696645248
  • NII論文ID
    130005473813
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100261
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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