フィールドワークとデスクワーク+ICT 地理屋はメディアに向いている:災害情報と報道

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  • Geographer is good for working in the media, field and desk work +ICT skill

抄録

1.メディアの仕事は地理屋にぴったり!?<br> 私は大学で地理(変動地形学)を学びました。卒論は「伊那谷の活断層」、修論は「台湾東海岸の地震性地殻変動と気候変動」です(それぞれ1988年度春季日本地理学会と1990年度秋季日本地理学会で口頭発表)。1990年NHKにアナウンサーとして入り、新潟、東京、名古屋、東京を経て、去年から放送文化研究所で災害情報やメディア動向の調査研究をしています。阪神淡路大震災、鳥取県西部地震、新潟県中越地震、ハリケーンカトリーナなどを取材。1999年台湾地震の取材で「自分の修論のデータを世に出さなければ」と思い研究を再開。2004年に博士(環境学)をいただきました。「メディアの仕事は地理屋にぴったり」の根拠は、1988年巡検参加者名簿にあります(会場で)。2年後、数少ない変動地形学徒が入社式で再会します。三脚に乗っていたEDMはカメラに、フィールドワークとデスクワークは、ロケと編集に変わりましたが、企画を提案して取材し番組にする営みは、研究テーマを決めて調査し論文を作る地理研究のプロセスと同じです。そしてメディアの仕事には人や社会への興味関心が必要です。人と社会や自然のかかわりを地域の視点でみる地理学に通じます。去年、初めて災害情報の社会調査を実施。人文地理で学んだ統計処理や分析法までもが鮮明に・・・。 <br>2.GISICTで変わるNHK災害報道<br> 現在の地理履修者はGISをはじめとするICTのスキルを習得できるようです。今まさにGISやG空間情報が、NHKの災害報道に革命を起こしています。ヘリコプターに搭載した8Kカメラの画像から20分で、立体モデルを作るシステムができました。2014年7月南木曽の土石流報道で導入され、8月広島土砂災害、9月御嶽噴火でも活用されました。撮影しながら伝送し、地上で画像処理(SfM)を行うため短時間で高精度な立体モデルを作ることができます。おそらく世界初のシステムです。広島土砂災害ではドローンも投入しました。2011年東日本大震災から導入された「スカイマップ」は、ヘリコプターの空撮映像に地名などの地理情報をマッシュアップして表示するシステムで、災害の把握や中継コメントに生かすことができます。さらにビックデータの携帯の位置情報などをリアルタイムでマッシュアップして、人がいる場所を優先的に取材し、災害軽減につなげる試みや、報道量の地域的な偏りがないように報道量を地図上に示す「カバレージマップ」の開発などGISやICTによって災害報道ツールが劇的に進化しています。 <br>3.広域と地域  命を守る災害報道<br> 後輩の卒論の手伝いで伊豆半島を回っているとき、伊東沖の噴火がありました。「東京でTVを見ている人と、ここ伊東の人では、知りたい情報が違うのでは」。採用時の面接で話しました。災害が起きていることを広く伝えることは必要です。しかし地元の人は、もっと詳細な「命や生活にかかわる情報」を知りたいはず。広域災害である津波警報などは、まず全国放送で対応します。しかし災害発生後は、自分の知りたい地域の情報が得られなければ視聴者から見放されます。緊急時どのエリアに、どんな放送を行うのか。地域放送にいつ切り替えるか。時間という制約の中で、地域やエリアを考える地理の視点は、編成・編集という災害報道の生命線にかかわります。台風や地震の際、TV画面を囲うL字が現れます。きめ細かい地域の災害・生活情報を文字で伝える工夫です。さらに「必要な(地域の)人に、必要な災害情報を確実に伝えるために」、ジオフェンスを使ったNHK防災アプリ(仮)の開発も検討しています。国民の生命と財産を守るための放送は、公共放送の“仕事”です。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696673920
  • NII論文ID
    130005481657
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100026
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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