秋吉台のドリーネにおける石灰岩の溶解速度

書誌事項

タイトル別名
  • Dissolution rate of limestone in a doline on Akiyoshidai Plateau

説明

カルスト地域に見られる凹地(ドリーネ)の形成過程を議論する上で,ドリーネ内における石灰岩の溶解速度の空間分布を明らかにすることは重要である.Mastushi et al. (2010) は宇宙線生成核種年代測定法により秋吉台の1つのドリーネの溶解速度を明らかにするとともに,現在ドリーネの存在する場所が20万年前にはほぼ平坦な地形であったことを推定した.本研究では,先行研究と同一のドリーネにおいて,石灰岩の野外風化実験,電気比抵抗探査,土壌水分量観測などを組み合わせ,現在の環境下での石灰岩の溶解速度とその規定要因について検討する. 秋吉台中央部の長者が森付近,直径150 m,深さ20 mのドリーネを調査対象とした.ドリーネの斜面上部,中部,下部,底部の4地点の土壌中(深さ50 cm,斜面上部と下部には更に深さ15 cm)に合計6個の石灰岩タブレット(直径3.5 cm,厚さ約1 cm)を設置し,野外風化実験を実施した.設置期間は2009年4月–11月,2010年3月–2011年1月,2011年3月–11月である.同時に土壌水分と地温を連続観測し,二酸化炭素濃度を定期的に測定した.さらに,電気比抵抗探査と簡易貫入試験を行い,地盤構造を把握した. 1年間のタブレットの重量減少率(以下溶解速度とする)は,斜面上部と中部の深さ50 cmで1.6–3.3%/yrと大きく,斜面下部で0.11–0.55%/yrと小さかった.場所による溶解速度の違いは,土壌水分が飽和状態であった時間の長さに対応している.土壌空気の二酸化炭素濃度の平均値を加えた重相関分析も実施したが,相関係数の増加は若干にとどまった.一方,乾燥季に実施した電気比抵抗探査により,斜面中部から下部の土壌–基盤岩境界付近に比抵抗値が小さい層が存在することを確認した.この層が一年を通して飽和状態(土壌水分飽和時間が100%)であると仮定すると,土壌–基盤岩境界付近の石灰岩の溶解速度は3.9%/yr (356 g/m2•yr)であると推定される.この値はMastushi et al. (2010)の結果(63 – 256 g/m2•yr)の最大値と比較して1.3倍大きいことから,現在の溶解速度は過去の値と比べてほぼ等しいかやや増加していることが推定される.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696762752
  • NII論文ID
    130005457208
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100183
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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