モンゴル北部永久凍土域のカラマツ林における水文気象・生態・年輪年代の長期モニタリングの初期解析

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タイトル別名
  • Preliminary analysis of Long-term hydro-meteorological, ecological and dendro-chronological monitoring over the larch forests on the permafrost in northern Mongolia

抄録

1.  はじめに<br>モンゴルはシベリアから続くタイガ林の南限に位置している。モンゴルの森林面積は国土の約7%を占めており、その約80%はカラマツ林(Larix siberica)である。モンゴルでは森林は地下に永久凍土がある北向き斜面に主に分布し、永久凍土がない南向き斜面には草原が主に分布している。火災、伐採、虫害等の森林に対する撹乱は森林の将来変化において考慮すべき重要な要素である。モンゴルでは、気温の上昇(近年60年間で1.8℃)、降水量の変化(夏季に7.5%の減少、冬季に9%の増加)等の気候変化が顕著である。気候の変化や人為的影響などの変化がモンゴルの生態系、特に森林の分布に影響を与える可能性がある。2009年よりモンゴル北部永久凍土域のカラマツ林において水文気象・生態・年輪年代の長期モニタリングを開始した。本研究の目的は、モンゴル北部の永久凍土上のカラマツ林における熱・水・二酸化炭素の交換過程とその動態を複数のアプローチから総合的に明らかにすることである。本稿では、観測の方法と得られたデータならびに初期解析結果を示す。<br><br>2.  観測方法とデータ <br>観測サイトはモンゴルトゥブ県バツンブル郡ウドレグ村(48°15’43.7’’N, 106°50’56.6”E, 標高1264m)のモンゴル国立大学研究林内のカラマツ林にある。観測器材は高さ25mの鉄塔およびその周辺の樹木や地面に設置した。水文気象観測は、気温・相対湿度(2高度:25m, 2m)、気圧、風向風速、降水量、積雪深、短波・長波・光合成有効放射量(上向き・下向き:2高度:25m, 5m)、地温(0, -0.2, -0.4, -0.8, -1,-2,-3,-4,-6,-8,-10m)、土壌水分量 (0.1,-0.3,-0.5,-0.7,-0.9,-1.3,-1.8.-2.) と顕熱・潜熱・運動量・二酸化炭素フラックス(超音波風速温度計と赤外線水蒸気二酸化炭素分析計のデータから渦相関法で算出)を計測している。生態観測は、樹木の胸高直径の成長量(デンドロメーター)、樹液流量(グラニエ法)を計測し、植生および地表面状態(タワー頂上から北向きに設置した定点カメラの写真から解析)を記録している。年輪年代観測は、各樹木の年齢、各年の成長量、干ばつ・火災履歴を測定している。<br><br>3.  結果<br>定点カメラの写真の解析結果から地表面状態とカラマツ林の生物季節が明らかとなった。1月~4月上旬と11月~12月は地表面に積雪があり、5月下旬にカラマツの葉が展葉したのち、葉の成長の最盛期を7月に迎え、10月上旬に落葉していた。気温の年較差は約60℃(6・7月に+25℃~27℃、12月に―30℃)であった。年降水量は約250mmで、5月から9月の降水量が年降水量の約90%を占めていた。深さ10cmの土壌水分量は、4月には約10%以下であったが、降水の季節変化と対応して5月ごろから増加し、8月までの間は約20%で、10月から減少し約10%以下となった。地温は深さ3m以下では一年中―0.2℃程度となっており、永久凍土となっていることが分かった。熱・水・二酸化炭素収支については解析中である。カラマツ林の平均高は18.3m、平均胸高直径は33.2cmであった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696813312
  • NII論文ID
    130005457039
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100092
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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