黄河全流域における水資源需給構造の類型化
書誌事項
- タイトル別名
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- Classification of structure of water resource demand and supply in the Yellow River Basin of China
説明
大西ら(2006)は、黄河流域全体の水資源需給の時空間構造を県級行政単位別・月別に表現し、上流から下流への取水・耗水・還元といった一連の水循環を分析するための枠組みを提示した。しかしここでは、地表水と地下水の水資源量が手法上の制約から混同されており、これらの現象を個別に再現するには至らなかった。一方Ichinose et al. (2009) は、黄河流域における地下水位の挙動を数値シミュレーションで再現することを目的として、具体のデータが公開されていない地下水需要の空間分布を高解像度のグリッドベースで把握することを試みた。しかし、農業用取水量の季節依存性は非常に大きいため、地下水の挙動を理解するためにも、正確な農事暦を反映した取水シナリオの把握が課題として残っていた。<br> 以上により本研究では、大西らの推計した水資源利用構造と、Ichinose et al.の推計した地下水利用構造とを地域別に直接比較することにより、データが存在せず実態把握の困難であった地表水の利用構造を描き出すことを試みた。大西らの対象年次は1997年、Ichinose et al.の対象年次は1996年である。Ichinose et al.においては、グリッドで表現された工業用と生活用の地下水利用量を県級行政単位別に集計したマップも提示しており、今回比較に用いられるのはそのデータである。<br> 黄河流域に大部分が含まれる35の地級行政単位を抽出し、地下水利用構造(棒グラフ)の形態的類似性のみに着目してそれらを12の小流域に分類した。地表水を含んだ水資源需要量と地下水利用量とを交互にならべたグラフの事例を図に示す(単位は万t/km2)。一般に上流域では地表水に依存し、農業での利用割合が低いため、地下水利用の季節変動性は小さい。一方、中流域から下流域では地下水への依存の度合いが高くなり、農業での利用割合が高くなるため、地下水利用の季節変動性は大きくなる。とりわけ、その傾向は黄土高原において顕著である。また、最下流域では再び地表水に依存している。さらに地下水利用構造の類似性にもかかわらず、小流域の中でも地表水を含めた水資源の需給構造に多様性が見られる地域がある。とりわけ中流域では、大河川へのアクセスの状況に応じて多様性が顕著である。また、農業以外で地表水が使われるのは工業が多い。
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2012s (0), 100072-, 2012
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205696829056
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- NII論文ID
- 130005457070
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可