フランス条件不利地域における山地農家の経営基盤

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タイトル別名
  • Management Foundations of Farmers in the Less Favoured Areas of France
  • マッシフ・サントラル,メザン地域を事例に
  • Case Study of Pays du Mezenc, Massif Central

抄録

条件不利地域の山地空間の中で,山地農家がいかなる経営基盤のもとに農業を継続させているのかを,農家の経営的な視点から明らかにすることを本発表の目的とする.本研究では,マッシフ・サントラルの中央に位置する山間地域であるメザン地域を調査地域とした.酪農専業農家はメザン地域の伝統的な経営タイプであり,飼育頭数や農地が小規模で経営的革新に保守的な農家が多い.出荷形態はダノンやソディアルといった大手乳製品企業との取引が大半を占めており,地域外企業への依存が高まっている.肉牛を経営収入の柱とする肉牛専業農家は,乳量割当制(1984年)の影響を受けて,割当量の少ない酪農家から分化してきた経営体群である.メザン地域でも高い標高の地域に分布する肉牛専業農家は,いずれも耕地が少なく家畜飼料に多額の費用を投じている.出荷形態は,県内のローカルな地元仲介業者との取引が中心で,相対交渉による家畜取引が行われる.同じくローカルな販路を特徴としているのが,羊飼養を経営に取り入れている羊複合農家である.彼らは生産の付加価値化に特に積極的な経営戦略に柔軟な経営体群であり,市場価格が低い羊肉収入を補うため有機農業やラベル認証,AOC原産地呼称など複数の付加価値を組み合わせた経営が特徴的である. 一方,付加価値化による生産ではなく,規模拡大による生産量の増大によって所得を確保する経営体群が,酪農と肉牛を組み合わせている牛複合経営農家である.いずれもガエク(GAEC)と呼ばれる家族法人の形態をとり,地域の退職・高齢農家の農地を集積し,規模拡大を続ける農家である.一方,その他経営は,他地域からの移住者であり,規模拡大を望んでいるが移住者であるがゆえに近隣農家からの農地貸借には障壁があり,有機農業の付加価値により生計を立てる経営体である. 以上の5タイプの経営では,類型ごとに異なる経営特性と販路,販売戦略を持つ.条件不利地域に位置するメザン地域では,農家にとって重要となるのは原産地呼称を利用した付加価値化である.メザン地域では,西側がAOC指定のレンズ豆,東側はAOC牛肉のファン・グラ牛で地域全体が地理的呼称範囲にあり,地域全体で取り組む高付加価値化が経営基盤の一つにある.また一方で,経営補助金は各農家の生産収入の約20~60%を占め,これら補助金なしでは経営が成り立たない事も事実である.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696831232
  • NII論文ID
    130005456951
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100069
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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