口永良部島噴火災害にかかわる応急対策支援活動

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タイトル別名
  • Emergency Disaster Control Measures Activity Supports against Kuchinoerabujima Island Eruption

抄録

【はじめに】2015年5月29日9時59分に口永良部島新岳が爆発的に噴火した。湯向地区の住民8人は,自宅退避後に12時頃に海上保安庁の小型船舶等で救出された。本村地区等の住民124人は,番屋ヶ峰に一時避難後,本村港に着岸した「太陽丸」に乗り込み,15時42分に島から脱出した。3人の島民は自らの漁船で屋久島へ向かった。立ち入り禁止の向江浜地区に居た80代の男性が顔や手に火傷を負い,気分が悪くなった70代男性とともにヘリコプターで救急搬送されたが,軽症で命に別状がなく,結果として82世帯137人の島民全員がその日のうちに屋久島町宮之浦地区に避難できた。(注…上記の人数は,報道等の発表によるもので,正式ではない。)<br>  筆者は,鹿児島大学地域防災教育研究センターによる「口永良部島新岳噴火災害応急対策支援活動」として,噴火翌日以降,5回入島し,屋久島町宮之浦地区の避難所や仮設住宅建設予定地等を視察した。特に6月については「調査」より「支援」を主目的に,屋久島町や鹿児島県に助言した。本発表では,この活動について紹介する。<br>【避難所】 屋久島町宮之浦地区では,「老人憩の家」「宮之浦公民館」「縄文の苑」の3箇所で,避難当日の5月29日夕方から避難所が開設された。5月30日に3つの避難所内の様子を視察した筆者は,避難所ごとに避難者の男女別年齢構成,家族構成,建物の広さや間取りなどの大きな違いに気づいた。一般に,避難所の運営は避難者自らが組織的に行い,行政関係者は基本的に支援にまわるが,避難所ごとの前述の特性や避難者の意思に応じて運営の仕方を一律化しないことを助言した。また,避難所内の居住空間を①個人空間,②共用空間,③応接空間に3つに分け,間仕切りやカーテン等で個人空間をつくることも提言した。特に1つの避難所では,他に比べて狭く,避難者1人当たりの利用面積が最低とされる2㎡を下回っており,かつ「女性が着替える場所」や「子どもの勉強部屋」が十分に確保されていなかった。そこで,不必要な荷物や運ばれ過ぎた支援物資を避難所外に運んで空間を増やすことを提案した。<br>【仮設住宅】 本稿執筆の7月22日時点で,仮設住宅が建設中であり,入居方法や自治会の編成等について避難者間で話し合いがもたれている。屋久島町の仮設住宅は,与論島タイプのプレハブ仮設住宅の改良型であり, 屋久島に特徴的な夜の「山風」と昼の「海風」を室内気候の改善に活用するべく斜面の最大傾斜方向にほぼ直角に交わる向きに棟が配置されている。「窓を開けた生活」が前提なることから,生活音,タバコ臭や生活臭を隣人間でよく感じやすくなることから,同じような生活習慣者がまとまった入居することを提案した。また,室内での喫煙行動の一定の制限と,仮設団地の用地内の東端と北端に屋根つきの「喫煙スペース」を2箇所設置し,風向きに応じた喫煙場の利用の奨励を提言した。<br>  さらに,岩手県宮古市や鹿児島県与論町での仮設住宅での温湿度環境とそこでの生活に係わる調査に基づくと,屋久島の気候環境下のプレハブ系仮設住宅では夏季には窓を開けるだけでは熱中症にかかる危険度が高いことが予想される。そこで,電気代がかかるが日中中心のエアコンの適切な使用と,火気の使用で高温となる台所での調理時の換気扇使用を推奨した。またトイレでは,エアコンの冷気が最も届き難くかつ外側に断熱材が施されていないために、夏に高温、冬に低温になりやすい。特に脳梗塞や心筋梗塞の病歴者などはトイレ利用時に温度差があることをよく知り,利用前に換気扇を回すか,ドアを開けておくか,また冬には便座を暖めておくなどして「温度差」を小さくすることを助言した。<br>  一方,仮設団地が立地する「傾斜地」に関連して,以下を助言した。仮設住宅建設地周辺の「南西-東北方向」での道路の勾配が国土地理院の地形図から読み取ると約1/20(0.5%)であり,車いす利用者が屋外移動時の「スロープ」として許容できる上限値である。従って,「散歩」などの身体活動を行う場合には,前期高齢者などでは,体力に合わせて「南西-東北方向」道路(坂道)での移動も取り入れて運動強度を調整すること,一方、やや体力的に弱い後期高齢者などの場合には,仮設団地の敷地内での周回移動や等高線沿いの道路(東南-南西方向)を中心に利用することが望ましいことを伝えた。<br>  また,買い物ができる最寄りのスーパー「わいわいらんど」までの距離は約600mで,体力に応じて徒歩で約8~16分の所要時間が予想される。岩手県宮古市での仮設住民の徒歩生活範囲は、道のりで500~1000mであることから,後期高齢者などの体力的な弱者の買い物行動での支援の必要性を提言した。<br> 【おわりに】 なお,発表当日には,現在実施中の避難者への質問紙調査の結果などについても報告する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696833024
  • NII論文ID
    130005490225
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100194
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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