スペインにおける日本人旅行者の観光行動空間

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Spatial Characteristics of Japanese Tourist Activities in Spain

抄録

日本を巡る国際旅行者の状況をみると、これまで訪日外国人旅行者数よりも海外旅行を行う日本人旅行者の方が多いまま推移している。しかし、従来の研究では海外旅行をする日本人の観光行動についてはあまり研究が行われてこなかった。日本における観光行動についての研究は都市内や観光地内で行われており、これらのスケールでの観光行動は明らかになりつつある。しかし、このスケールよりも広域な範囲の観光行動についてはほとんど解明されていない。ところで、ガイドブックは旅行者に必要な情報を提供するものである。つまり、ガイドブックを分析することで旅行者の嗜好が分かり、旅行者の特徴をより明確にすることができると考えられる。本研究の目的は、スペインを訪れる日本人旅行者の観光行動空間を明らかにし、その特徴に影響を与える要素を考察することである。ここでは、旅行者が訪問する都市を分析することによって観光行動空間の特徴を明確にする。具体的には、日本人旅行者への聞き取り調査によって、彼らが訪問する都市の特徴を明らかにする。また、日本語と英語、スペイン語で書かれたガイドブックの分析結果や聞き取り調査の結果から、観光行動空間の特徴について考察を行う。日本人旅行者の特徴として、初めてスペインを訪れる旅行者が多く、7日程度の日程で周遊旅行を行うことが挙げられる。そのため、移動に関わる時間を最低限に抑え複数の都市を訪問する傾向が明らかになった。目的地となるのはマドリッドやバルセロナといった大都市とアンダルシア州である。ガイドブックにもそれら都市や地域について多くの記載がみられる。一方で、北スペインを訪れる旅行者は非常に少なく、ガイドブックでも扱いは小さい。都市ごとの訪問者数とガイドブックの記載量の関係をみるために回帰分析を行った。その結果、両者の間には強い正の相関がみられた。アトラクションについて日本語とその他言語のガイドブックの記載を比較すると、日本語ガイドブックでは美術館や遺跡・史跡の記述が多く、自然資源やナイトライフについての記載が少ない。実際の観光行動もガイドブックと同様の傾向を示した。 これらの結果から、日本人旅行者がスペインに対して有している知識やイメージは限られており、ガイドブックからの情報も一部の地域に偏っており、観光行動が限定的な傾向を示すと考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696847360
  • NII論文ID
    130005457089
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100124
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ