東日本大震災に際しての地図・資料の作成・公開と課題

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書誌事項

タイトル別名
  • Making and release some maps and materials on the Great East Japan Earthquake and issues
  • 人文地理学の立場から
  • a human geographical perspective

抄録

1.はじめに<br> 東日本大震災のような大規模な災害では,被害の把握だけでも時間がかかるため,災害発生後の地図化もハザードマップの一種としての役割も果たすであろう.<br> こうした地図類に関しては,数値の階級区分や使用する統計,また提供形式など利用者のニーズが多様であることから,単一の組織による統一した主題図に集約されるよりも,様々な主体から提供されることが望ましい.筆者は,昨年3月11日以降,有用と思われる地図情報・資料を継続的に作成し,ホームページ,ブログ等を通じて発信してきた.本報告では,それらの作成と活用,課題を述べたい.<br><br>2.作成・公開した地図・資料類<br> 筆者が作成し,公開した地図類としては以下のようなものがある.まず震災直後では,津波被害を考慮して等高線や人口分布のような基本的な情報をKMZおよびGoogleマップ上で提供した.3月下旬では,原発事故周辺および津波被災地に関する人口の集計を行った.4月以降では,人口移動に関係して住民基本台帳人口移動報告月報を集計・グラフ化,また被害の統計が安定してきたことから人的被害/住戸被害を市町村ごとに地図化して公開し,定期的に更新している.また,8月以降には筆者開発のソフト「時系列地形図閲覧ソフト『今昔マップ2』」に東北地方太平洋岸の過去4時点の1/5万地形図を収録したデータを追加した.<br><br>3.その活用<br> これらがどのように,またどの程度活用されたのかは,閲覧数・ダウンロード数である程度把握できる.ウェッブサイト(http://ktgis.net/tohoku_data/)のトップページは2011年中で18,000アクセス,原発周辺人口集計のトップページは1,900アクセス,KMZファイル類は1ファイルあたりおよそ500~1200ダウンロードだった.また,ブログ記事のページビューでは,「福島の原発避難地域内の人口」のページが5,800アクセスで最も多かった.これらのアクセスは,検索サイト経由のものが多く,特定のキーワードでの検索で筆者のサイトが上位に表示されるためである.<br><br>4.課題<br> 人文地理学で頻繁に使用される統計でも,人口,農林漁業,工業,商業など多岐に渡り,普段からそれらのデータに精通していなければ,正しく解釈することができない.したがって,人文地理学の分野においても幅広い領域の研究者が分担・協力して作成することが望まれる.<br><br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696851200
  • NII論文ID
    130005457099
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100117
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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