中期更新世以降の濃尾傾動地塊運動と濃尾平野の埋積過程
書誌事項
- タイトル別名
-
- Nobi tilted basin fill since the middle Pleistocene, central Japan
説明
桑原(1968)が濃尾傾動地塊モデルを提示以来,濃尾平野は傾動(断層角)盆地の典型として知られる.桑原モデルは,現在もしばしば濃尾平野の地形発達を紹介する際に引用される.しかし,当時は,地形や堆積物の編年技術が未熟で,平野埋積層のうち先熱田層はPlio-Pleistoceneとして一括された.1980年頃から濃尾平野地下の中期更新統は海部累層と弥冨累層に分けられ(桑原, 1980),珪藻分析に基づき海部累層に海進・海退サイクルが認定され(森,1980),テフラ・古地磁気編年によって海洋酸素同位体ステージと対比され(須貝他1999),反射法地震探査結果と合わせて過去90万年間の地殻変動も論じられた(須貝・杉山1999).各氷期の基底礫層の粒度や層厚が海面の低下量や低下期間を反映する可能性も指摘された(Sugai他2016).濃尾平野で掘削されたオールコアの深度545 m付近の松山ブリュンヌ境界直下に御嶽白尾火山灰層が25 ㎝の層厚で発見された(須貝他2017).また,濃尾平野の完新統は,海津(1994),小野他(2004),山口他(2006),大上他(2009,),堀・田邊(2012)らによって大きく進捗し,養老断層系の完新世における活動履歴の解明も進んできた(須貝2011Niwa他2012など), 本発表では,上記を踏まえ,コア解析を行い標記について検討し,1)定向等速的な濃尾傾動運動と約10万年周期の海水準変動に伴い堆積空間形成速度が系統的な時空間変動を繰り返してきたこと, 2)高海面期には,木曽川水系から供給される河川堆積物が扇状地・自然堤防帯・デルタ・プロデルタを形成し,各地形帯が南南西へ前進し,3)海退期には,扇状地礫層が少なくとも現海岸線付近まで到達し,基底礫層を形成したこと,4)海面上昇期には,海域が現濃尾平野の北部にまで急拡大し,その後プロデルタ層が堆積・前進して,南に厚く北へ薄層化する内湾泥層が堆積したこと,5)以上の堆積シーケンスは,沈降速度の大きい養老断層に近く,伊勢湾に近いほどよく保存されていること 6)各堆積シーケンスにおいて,平野の南ほど海成泥層/河成砂礫層の層厚比が大きくなること,7)伊勢湾-濃尾平野地域は,日本の沈降埋積型地形発達の模式地と呼ぶにふさわしいことを報告する.
収録刊行物
-
- 日本地理学会発表要旨集
-
日本地理学会発表要旨集 2017a (0), 100209-, 2017
公益社団法人 日本地理学会
- Tweet
キーワード
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205696852736
-
- NII論文ID
- 130006182772
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可