インド自動車産業の発展と産業集積

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  • Development of the Indian automobile industry and formation of the industrial agglomeration in the NCR of Delhi

抄録

1.本発表の目的<br> 本発表は、インド工業化の象徴事例である自動車産業を取り上げ、それによる産業集積の形成を論じる。具体的には、同産業の発展過程や全国的な立地体系を提示した後に、インド最大の自動車産業集積であるデリー首都圏を対象に、集積発展のダイナミズムとして面的拡大と重層化を明らかにする。以上を通じて、現代インドに出現しつつある工業空間の特徴を提示することができると考える。<br> 2.自動車産業の空間構造 <br> 自動車産業の発展過程は、大きくは第一期(1979年以前)、第二期(1980年代)、第三期(1990年代)、そして第四期(2000年以降)に分けられる。以上の四期を経て、インドの自動車産業には三つの核心的集積(デリー首都圏、マハーラーシュトラ州西部、チェンナイ=バンガロール)と、それらを結んだ「オート・クレセント」と呼ぶべき生産地帯が形成された。当初(第一期)の自動車工場はボンベイ、マドラス、カルカッタという港湾都市に立地しており、デリーには所在していなかった。この時点では、オート・クレセントは明瞭ではない。第二期の1980年代前半にデリー近郊のグルガオンにマルチ・ウドヨグが設立され、同社が事業的な成功をおさめると、自動車産業集積としてのデリー首都圏の地位が急速に高まった。第三期以降に、三つの核心的集積やそれらを結ぶ地帯に内外からの投資が集まったこと、それに対しカルカッタ(コルカタ)には新規投資が向かわず、その地位が大きく後退したことによりオート・クレセントが明瞭化した。<br> 3.自動車産業集積発展のダイナミズム<br> デリー首都圏はインド最大の自動車産業集積といっても過言ではない。2011年度のインド乗用車生産312万台のうち37.9%、二輪車生産1,545万台のうち45.1%が当地に由来するからである。当地の自動車産業集積の範囲を自動車メーカーの立地で示せば、ハリヤーナー州のグルガオン県を核として、東はウッタル・プラデーシュ州のゴータマ・ブッダ・ナガル県から、西はラージャスターン州のアルワル県にまで広がる(図)。著者はこの範囲を「オート・コリドー」として捉え、1990年代からその成長ダイナミズムや内部構造を研究してきた。この集積形成は、1991年の新経済政策への転換以降、企業は自らの戦略によって工場の適地を探査し立地場所を決定できるようになったことを与件とする。その下で、当地における優れた立地条件が累積的な投資を呼び込み、産業集積の発達を促進しているが、それには面的拡大と重層化という2つの動向が見いだせる。前者は、国道8号に沿った立地の外延化であり、その高速道路としての整備と沿線での工業団地開発を前提とし、デリーからの距離逓減的な地価分布が立地因子として作用している。重層化については、従来は数が限られていた二次サプライヤーや、資材・部材・金型メーカー(これらを一纏めにしてサポーティング企業とする)の設立が相次いでいることによりもたらされている。その立地は外延部で顕著であるほか、グルガオン県の工業団地内のレンタル工場が活用されている点が注目される。そして当地に進出した外資自動車メーカーの中には、当初の生産機能に加えて研究・開発機能を充実させているものがある。これらがエンジンとなって、オート・コリドーの成長が続いている。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205696875136
  • NII論文ID
    130005481625
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100013
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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