富山県の森林における酸性雨に対する感受性分布図

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  • Mapping of relative sensitivity to acid deposition for Toyama pref. by utilizing digital national land information

抄録

富山県の森林における酸性雨の実態を把握するため、1990年に4カ所の観測地点が設けられ、以来、週一回の頻度で酸性雨のモニタリングが継続されている。その結果によると、ここ約10年、森林における降水の年平均pH値は 4.7〜4.9 の範囲でほぼ横ばいの状態で推移している。仮に、年平均pH値を 4.7、年降水量を3,000mmとして、雨や雪によって森林に降下する水素イオン量を試算すると60 me/平方メートルとなる。大気中における窒素酸化物等の酸性物質の大気環境が早急に改善されないことから、将来にわたってこのような量の酸性物質が森林に負荷されると予想されている。そこで、大気から流入する酸に対して現状の森林がどの程度の感受性を持っているかを知るために、富山県の林地を対象として1Kmメッシュの感受性図と森林土壌の緩衝能図の作成を試みた(衰退森林健全化技術対策事業2001年・林野庁委託)。<BR> 方法<BR>(1)感受性の評価<BR> 環境要因として地質、土壌、土地利用、降水量を用い、それぞれの要因を区分して評点を与えるストックホルム環境研究所の方法(1991年)と吉永の方法(1994年)を参考にした。使用した図幅は、土地分類基本調査で得られた 1/5 万縮尺の表層地質図および土壌図と自然環境保全基礎調査で得られた現存植生図、さらには降水量区分図を 1Km×1Kmのメッシュに区画し、その対角線の交点上の情報を代表値とした。さらに、地質では花崗岩や片麻岩のように中和能力が低いか、あるいは石灰岩のように中和能力が高く緩衝能が高いか、また、褐色森林土のように緩衝能が高いか、ポドゾル化土壌のように緩衝能が極めて低いかどうか。といったように、それぞれの要因で重みづけをした区分を行い、点数を与えた後、4要因の点数を重ね合わせにより加算し、1メッシュごとに得られた得点を基に感受性の強弱をあらわした。<BR>(2)森林土壌の緩衝能<BR> 富山県内に分布する森林土壌の内、土壌型、土壌母材、堆積様式などにより区分した64タイプの森林土壌( 200地点 )の上層50cmを対象に、硫酸を用いたpH測定による簡易な酸緩衝能試験を行い、その結果をもとに土壌タイプと標高情報から1Kmメッシュごとの緩衝能をあらわした。<BR>結果と考察<BR> 総メッシュ数は 4,126で、そのうち評価対象とした林地のメッシュ数は 2,870であった。感受性の強弱は7段階に区分され、土壌緩衝能は50から10,000me/m2/50cmを示し、その高低は7段階に区分された。低海抜の里山の森林では酸性雨に対する感受性は弱く、森林土壌の緩衝能は高い。一方、高海抜地では酸性雨に対す感受性は強く、緩衝能は低いという傾向がみられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205702500736
  • NII論文ID
    130007019297
  • DOI
    10.11519/jfs.114.0.286.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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