京都議定書に基づくARD抽出手法の検討(_I_)

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  • RS情報と行政情報によるARD抽出の比較

抄録

国レベルで透明かつ科学検証が可能なARD(新規造林、再造林、森林減少)把握手法を開発することを目標とし、本報では、行政情報と衛星情報と用いて、ARDの地理的特性の把握及び衛星情報の利用可能性について検討を行う。福井県・武生市を研究対象地として、行政情報と地理情報によるARDの地理的特性を分析する。次いで、RS情報による森林及び非森林地域の区分及び行政データで特定されたARD地域の抽出精度との関係について、中・高解像度衛星及びデジタルオルソフォトを用いて比較・分析をする。さらに、一定地域にグリッドを設定し標本調査で代表させ、システマティックにARDを抽出する方法を開発する。解析に用いたRS情報は、LANDSAT TM(1995/08/13)、ASTER (2003/09/03)、IKONOS(2003/11/2)、デジタルオルソ(1995年、2002年)である。また、行政情報では、森林簿、伐採届、林地転用書類、地理情報(林班・地番界)、及び環境庁自然環境調査データ(1-3回)を用いた。本研究で得られた結果は次のようである。(1)行政情報分析:平成9年から14年までの森林施業の傾向を分析した。毎年平均70haの地域において森林経営活動が行われており、そのうち、人工林の地域が約92%を占めている。また、主間伐別伐採面積率を見ると、主伐は約11%であり、88%が除間伐として行われた。皆伐後に転用された用途を見ると、造林、土砂採取、工事用地、住宅、作業路敷、鉄塔用地等となっているが、再造林や拡大造林等経営活動に当たる地域が多く、ARDに当たる地域は少なかった。Dに当たる地域の平均面積は0.24haであり、総皆伐面積の35%であった。(2)地理特性分析:転用された地域の地理的特性は以下のようである。工事用地、住宅、作業路敷、鉄塔用地に変更された地域について、道路及び森林・非森林境界からの距離を分析した結果、作業路敷、鉄塔用地は平均200m以上であったが、工事用地や住宅に転用された地域は平均30m以下であった。また、作業路敷、鉄塔用地の森林・非森林境界からの距離階別面積割合を見ると、50m以内は3%であり、工事用地と住宅はほとんど50m以内に存在した。このことにより、衛星データを用いてARDを抽出する場合、森林・非森林境界や道路からのバッファーを設定し、その中で抽出する方法を検討するのが効果的であると考えられる。(3)衛星情報分析:2時期の衛星画像の各バンド値をそろえるため、回帰式を用いてASTER(2003年) のバンド値に対してTM(95年)のバンド値の補正変換を行った。行政情報から得られた皆伐後の用途変更地域についてこの2時期のNDVIの変化を検討したところ、工事用地、住宅、作業路の値は減少する傾向が見られたが、鉄塔用地の値は増加した。造林地域の変動係数(CV)は約0.13であるが、工事用地や住宅のCVは約0.5前後となった。Dが発生した地域は、NDVIの変動及びCVの値が大きい。このCVはDの抽出の因子として重要だと考えられる。次に、オブジェクトをベースとした教師付土地被覆分類を行った結果(ASTER、2003年)と行政情報(伐採届け書、1997年_から_2003年)と比較した結果、工事用地と住宅に変更された地域は70%以上特定できるが、作業路敷の地域は40%前後しか特定できなかった。特に、鉄塔用地となった地域の特定は難しい。(4)衛星データによるARD把握の可能性:行政情報(伐採届)と衛星情報(ASTER)を比較してARD地域を分析した結果、Dが行われた地域の経年変化や大きさの問題はあるが、中解像度衛星画像(解像度:15m)を用いて場所の特定は可能だが、面積を算出するには誤差が大きい。ARDの場所の特定のみであれば、中解像度衛星でも有効だと考えられるが、正確な面積を把握するには、より高解像度のRS情報が必要であろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205702840320
  • NII論文ID
    130004614406
  • DOI
    10.11519/jfs.115.0.p4107.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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