放置竹林の整備方法とその効果に関する一考察

書誌事項

タイトル別名
  • 長野県伊那谷のマダケ林を事例として

説明

1.背景と目的日本文化の代名詞でもある竹を生産してきた竹林は、現在多くが放置されており里山や人工造林地への拡大・侵入や、竹林そのものの荒廃による公益的機能の低下といった様々な問題を抱えている。この様な問題を解決するためには適切な竹林整備が必要である。本研究では、適切な整備方法を検討するために整備が竹林の成育に与える効果について長野県伊那谷のマダケ林を事例として調査・検討を行い、その問題点や課題点を明らかにすることを目的とした。2.方法現地調査として「放置竹林」「整備竹林」「改良整備実施竹林」の条件の異なる3つの林分において10×10mのプロットを設置し、稈長、枝下高、直径、節間長、本数、位置等について林分調査を行った。直径については竹の形状を算出するために地際から高さ2mまでの値を測定した。放置竹林と整備竹林、放置竹林と改良整備実施竹林について調査結果を比較することで、整備が竹の育成に与える効果と今回行われた改良整備の内容についての考察を行った。3.各林分の整備方法整備竹林では毎年弱度の抜き伐りと施肥を行っており、竹の育成を目的として整備を行っている。改良整備実施竹林は今年放置竹林において4年生以上の竹を全て伐り取る方法で林分の改良を図っている。放置竹林は最近5年ほど放置されている林分である。4.結果と考察林況:各プロットの竹を年齢別に「新竹」「枯損竹」「二年生以上」の三種に分類すると整備竹林で新竹22%、枯損竹4%、二年生以上74%であり、改良整備実施竹林で新竹25%、枯損竹11%、二年生以上64%、放置竹林で新竹8%、枯損竹24%、二年生以上68%であった。改良整備実施竹林においては今回の整備によって4年生以上の竹を全て伐採したことが新竹の割合を高め、放置竹林においては竹の利用が無いために枯損竹が多くなったと考えられる。また、整備竹林では枯損竹が少なく二年生以上が他よりも多く見られた。新竹の割合も多く、枯損竹が少ないことから新竹の発生に関しては整備による効果が出ていると考えられる。形質:竹材の形質は「胴張り型」「株張り型」「中間型」「枯損」の4つに分類することができる。良質とされるのが「胴張り型」と「中間型」の竹で、「株張り型」の竹は劣質とされる。(2)これらの形質は地上高約2mまでの直径値の変動により決定されるもので、竹林の良・不良の判断の大きな目安となる。各林分の形質別本数割合は、整備竹林で胴張り型が48%、中間型が18%、株張り型が30%、改良整備実施竹林で胴張り型が36%、中間型が13%、株張り型が38%、放置竹林で胴張り型が38%、中間型が16%、株張り型が22%であった。良質な竹である胴張り型が最も多かったのは整備竹林であり、劣質な竹である株張り型が最も多かったのは改良整備竹林であった。また、放置竹林においては胴張り型の竹が少ないことから良質材が成育しにくい環境にあることが考えられる。竹の形質に関しても整備竹林において良質な竹が多い傾向を示したことから、整備の効果が明らかとなった。しかし、各林分の新竹について形質の本数割合をみると今後の竹林の変化に関して劣質林に向かっていることも示唆された。整備竹林では胴張り型が23%、中間型が50%、株張り型が27%と中間型が半数を占め、この割合のまま年を重ねると中間竹が増加し、将来的には株張り型の竹が増加する可能性がある。改良整備竹林では胴張り型が21%、中間型が36%、株張り型が43%と株張り型が非常に多く、今後適切な整備を行わなければ株張り型が半数を超る可能性がある。放置竹林においては胴張り型が31%、中間型が31%、株張り型が38%でやや株張り型が高いが平均的な割合分布となり、胴張り型が最も高い割合であった。新竹に限っては整備によって劣質な竹の発生を抑制できているが、良質な竹の生産に関してはさして効果をあげていないことが明らかとなった。5.まとめ今回の林分調査において、整備を行うことによって翌年の新竹発生を促進させること、整備によって形質の良い竹が多く発生すること、新竹に関しては整備によって劣質な竹の発生は抑制されたが良質な竹の発生は促進されなかったことが明らかとなった。このことから、竹林における整備は材生産に対して良い効果を与えることが明らかとなった。しかし、整備竹林における整備については良質材を生産するには不十分な整備であり、より適切な整備方法の検討が必要である。そういった意味において、改良整備竹林における今後の動向についての追跡調査が重要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205703681152
  • NII論文ID
    130007019977
  • DOI
    10.11519/jfs.115.0.g23.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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