土壌に応じた細根系内の個根配置の違い

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タイトル別名
  • Soil horizon alter distribution of individual roots within fine root system of Chamaecyparis obtusa. Sieb et Zucc.

抄録

樹木は不均一な土壌養分・水分を効率的に吸収するため、土壌環境に対して細根の形態、構造的変化で対応している。そこで、樹木細根の土壌環境に対する振る舞いを調べた。本研究ではヒノキの細根を材料とし、土壌の違いに対して細根系の分枝位置ごとの形態的、解剖学的特徴を比較した。調査地は京都市の京都大学上賀茂里域ステーションのヒノキ林で行った。調査地の土壌はmoder型で、A層土壌の発達は悪い。調査はイングロースコア法によって行った。メッシュサイズ2mm, 直径5cm, 長さ20センチのイングロースコアの上部に有機物層、下部に鉱質土(B層の土)を現地土壌と同じ厚さだけ詰め、2002年三月より一年間放置した。イングロースコア内の土壌をまず鉱質土と有機物層にカッターで切り分け、そこから細根を取り出した。細根は根端を一分枝目とし、二分枝目と基部の三種類の分枝位置を別々に分け、解剖用サンプルとした。解剖用サンプルは徒手切片によって解剖検体を作り、蛍光顕微鏡下で観察した。<br>結果・考察<br>観察された108断面の原生木部数から、ヒノキ細根は主に二、三、四原器からなることが分かった。細根原生木部の分布はどちらの土壌においても分枝段階が低い位置ほど二原器が多く、四原器が基部に多いことで共通していた。特に有機物層においては一分枝目の二原器の割合はおよそ9割になり、鉱質土では二原器の割合はおよそ3割であった。原生木部数は後の二次肥大移行割合に関わっており、原基数が多いほど二次肥大しやすい。従って、鉱質土では細根系が先端に長命の根を配置するのに対し、有機物層では短命根を多く配置すると考えられる。各分枝位置で通導細胞を持ち、コルク層を欠く吸収根の割合を見ると、どちらの土壌でも一分枝目はほぼすべて吸収根で、基部は非吸収根であるが、二分枝目は吸収、非吸収根どちらも含んでいた。二分枝目の吸収根の割合は、鉱質土で有意に高かった。また、一分枝目の内皮、周皮の通導細胞の数を調べると、鉱質土で有意に高かった。これらの結果をまとめると、有機物層では、細根は先端に吸収力が比較的低い短命根を分布させ、根端を回転させて吸収を維持している。一方、鉱質土では長命の根が根端部となり、個々の根が高い吸収力を保持していた。ヒノキは土壌環境に応じて細根の吸収力維持様式を変えており、このことは、森林の地下部物質配分にも影響すると考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205703688960
  • NII論文ID
    130007019986
  • DOI
    10.11519/jfs.115.0.h07.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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