Beauveria bassiana 不織布製剤による野外網室におけるマツノマダラカミキリ羽化成虫駆除試験
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- Ishikawa Toshihiko
- College of Bioresource Science, Nihon University
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- Hatta Yuichiro
- College of Bioresource Science, Nihon University
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- Suzuki Motohiro
- College of Bioresource Science, Nihon University
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- Yamane Akiomi
- College of Bioresource Science, Nihon University
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- Iwata Ryu^taro^
- College of Bioresource Science, Nihon University
Description
1.はじめに<BR> マツノマダラカミキリMonochamus alternatus Hope(以下,カミキリ)はマツ枯れを引き起こすマツノザイセンチュウBursaphelenches xylophilus の媒介昆虫である。カミキリ防除の目的で,これまでにも,昆虫病原糸状菌Beauveria baassiana(以下,ボーベリア菌)を付着させた不織布製剤(樋口,1993)を用いた,カミキリの防除法が試験され,ある程度の成果を上げている(興津ら,2000)。そこで今回は,被害丸太の供試量を大規模(1.55m3)にし,その効果を調査した。以下,得られた結果を報告する。<BR>2.試料と方法<BR> 神奈川県日本大学生物資源科学部湘南キャンパス内に設置した網室を使用して行った。供試材は2003年3月4日に千葉県館山市平砂浦より採取したクロマツの被害材を用い,2003年6月5日から実験を行った。供試薬剤はT-99901(Beauveria bassiana培養シート型不織布製剤,幅5cm×長さ50cm;日東電工社製)を使用した。被害丸太,107本を網室A(4m×5m×3m)に運び入れ,南北方向に積み重ね,ボーベリア菌を付着させた不織布シートを供試材1m3当り10枚を基本に,木口面上部,木口面付近にそれぞれ均等かつランダムに15枚を設置し,これをガンタッカーで丸太に固定し,丸太から羽化脱出したカミキリが接触しやすいようにした。供試材にはビニールシートで全面を被覆し,木口面両側に成虫脱出用の開放口(一辺が35cmの逆三角形)を設けた。また,無処理区として,被害丸太,50本を網室B(1.8m×1.8m×2m)に運び入れ,南北方向に積み重ね,処理区と同様にビニールシートで全面を被覆し,木口面両側に成虫脱出用の開放口(一辺が25cmの逆三角形)を設けた。両網室内の被害丸太より羽化脱出した成虫は毎日採集し,1頭ずつポリカップ容器(11cm×11cm×9cm)内で個体飼育し,後食用餌木として1から2本のアカマツの枝を同時に入れた。餌は後食が進むにつれ適宜追加し,その個体が死亡するまで飼育・観察を続けた。死亡した個体は,プラスチックシャーレ(直径9cm)の底に湿潤濾紙を半分敷き,濾紙の敷かれていない方に死体を置き,パラフィルムで密閉し,25℃の恒温室にて保管し,分生子の叢生の有無を確認した。<BR>3.結果<BR> 施用区の脱出総数は♂♀合計685頭であった。♂脱出成虫の90.7%が脱出後15日までに死亡していた。♀脱出成虫は89.1%が15日までに死亡していた。また,この期間の死亡個体の分生子叢生率をみてみると♂では74.8%,♀では80.4%であった。無処理区の脱出総数は♂♀合計64頭であった。処理区と同様に羽化脱出後15日までの死亡数をみてみると,♂16.2%,♀14.3%であった。また,60日以上生存した個体が,♂70.3%,♀64.3%と,高い生存率を示していた。脱出後の被害丸太107本の成虫脱出状況を割材により調査した。全脱出孔数は841個であった。この被害丸太のうち11本について詳しく調査した所,穿入孔数200個,脱出孔数71個であった。材内で幼虫のまま生存していた個体が3頭,材内で死亡していた個体が126頭,うち5頭がボーベリアの叢生が認められた。今回,被覆シートに使用したビニールシートの脱出孔数を確認した所,31個の脱出孔が確認できた。この脱出孔31個の内,被害丸太の脱出孔に対応していた個体が19個体いた。その他の個体に関しては,シートの折り返しなどで行き止まりとなった所から孔を開けて脱出したものと思われる。<BR>4.考察<BR> 今回の駆除試験では,処理区の場合,羽化成虫が交尾行動可能となる,15日までに約90%の個体が死亡している。また,無処理区では,約15%がこの期間に死亡しているものの,約67%の個体が60日以上生存している。この結果により,本製剤の施用法・効果が羽化脱出成虫の早期死亡をもたらすことを顕著に示している。また全脱出孔数が841個に対し,総脱出数(採集数)が685個体という事から,ビニールシートで被覆し,開放口を限定したことによりシート内に閉じこめられ,死亡したものと推察される。しかしながら,シートと被害丸太が接触している所ではシートに直接,孔を開け脱出している個体もいることから,今後被害丸太の積み方やビニールシートの被覆方法に更なる検討を加えれば,より一層高い効果が期待できるものと考えられる。<BR>
Journal
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- The Japanese Forestry Society Congress Database
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The Japanese Forestry Society Congress Database 115 (0), F23-F23, 2004
The Japanese Forestry Society
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205703710720
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- NII Article ID
- 130007020017
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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