放置竹林・侵入竹林の土壌について(__I__)

書誌事項

タイトル別名
  • The characteristics fo soil in bamboo stand and artifical forest stand invaded by bamboo(I)
  • 隣接した林分での例

説明

福岡県の森林面積は約23万haあり、その内竹林は約1万haとなっている。竹林、特にモウソウチク林は竹材やタケノコの生産を目的に仕立て本数の調整などを行い管理されてきた。しかし、労働力の高齢化やプラスチックなど竹材に変わる代替材の普及や安い中国産タケノコの輸入などにより、タケ・タケノコの生産量が減少した。この結果、竹林は管理されず放置されたままとなり密度が増加するだけでなく、隣接するスギ・ヒノキの人工林へ侵入している。放置された竹林やタケに侵入されたスギ・ヒノキ林では、下層植生の減少、水土保全機能の低下だけでなくスギ・ヒノキ林の衰退も懸念されている。放置竹林や人工林へのタケ侵入拡大様式とこれにともなう土壌への影響を明らかにすることは、森林管理や公益的機能維持のため重要である。そこで、今回は放置されたモウソウチク林と、それに隣接するヒノキ林でモウソウチクに侵入された地点と殆ど侵入が見られない3地点で土壌調査を行い、物理性・化学性の違いについて検討した。 調査は福岡県浮羽郡浮羽町において同一平衡斜面に隣接して存在するモウソウチク林とヒノキ林で行った。モウソウチク林は約12__から__13年前ほどから手入れが放棄され、現在約7,000本ha-1の密度となっている。ヒノキ林は35年生で密度は1,700本ha-1で、約10年前からモウソウチクが侵入し始め、現在侵入されたヒノキ林内でのモウソウチクの密度は約2,700本ha-1となっている。調査地はモウソウチク林(竹林)とこれに隣接するヒノキ林でモウソウチクが侵入した林分(侵入竹林)およびモウソウチクの侵入が殆ど見られない林分(ヒノキ林)の3箇所に設定し、断面調査を行うと共に土壌試料を採取した。分析した項目は、100ml土壌円筒による土壌孔隙、pH(H2O)、交換性塩基および炭素・窒素である。 結果について、土壌の理学性である孔隙率について、深さ0-5cm、10-15cmでの粗孔隙率は竹林40%以上、侵入竹林35%程度、ヒノキ林30%程度で竹林が最も多かった。細孔隙率は、竹林23%程度、侵入竹林25%程度、ヒノキ林30%以上とヒノキ林が最も多かった。土壌断面調査の際の乾湿状態は、竹林、侵入竹林ではやや乾であったが、ヒノキ林では潤であった。また、竹林では落葉が土壌表面に厚く堆積しており、降水時に林内雨として林地表面へ到達しても土壌層内への浸透も少ないと考えられた。これらのことから、この竹林では隣接するヒノキ林より、降水時に土壌への水の浸透が少なく、浸透した水も粗孔隙率が高いことにより速やかに排水されると考えられた。 次に、深さ別の窒素、炭素含有率を見ると55-65cmを除いて竹林>ヒノキ林>侵入竹林の順で高かった。これは、深さ40cm付近まで竹林の根量がヒノキ林よりも多いため、根の腐朽による有機物の供給量が多いことも原因のひとつと考えられた。交換性(K+Ca+Mg)は竹林>侵入竹林>ヒノキ林の順に高かった。また、土壌pH(H2O)についても55-65cmを除いて竹林>侵入竹林>ヒノキ林の順で高かった。侵入竹林での土壌の化学性は窒素、炭素の含有率を除いて竹林とヒノキ林の中間的な値を示した。 今回、モウソウチクに侵入されたヒノキ林の土壌は物理性、化学性が影響を受けてヒノキ林の性質とモウソウチク林の性質の中間の性質を示すことが分かった。今後は、放置竹林や侵入竹林での浸透能や土壌の孔隙を中心に保水性に関する公益的機能についての評価を進める予定である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205705212416
  • NII論文ID
    130007020447
  • DOI
    10.11519/jfs.114.0.425.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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