森林限界のオオシラビソにおける冬季エンボリズムの発生メカニズム

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タイトル別名
  • Mechanism of winter embolism in timberline <i>Abies mariesii</i>

抄録

針葉樹の仮道管では、寒冷地の冬にもエンボリズム(通導阻害)が起こりにくく、そのことが高緯度地方や高標高域でマツ科針葉樹が優占することを可能にしている要因の一つといわれている。しかし、森林限界近くの厳しい環境下では、冬季にエンボリズムが発生するという報告もなされている。そこで、北アルプス南端・乗鞍岳の森林限界を形成するオオシラビソ(Abies mariesii)において、エンボリズムについての調査を行った。その結果、冬季を通じて強風に晒され、土壌からの吸水が停止した状態で水ストレスに陥っているシュートでは、冬季1月から3月にかけてエンボリズムが進み、3月末には木部の通導が完全に失われた。5月に入ると徐々に雪解けが進み、吸水が開始されるものの、エンボリズムが回復することはなく、完全に回復するのは7月になってからであった。エンボリズムが起きている木部をcryo-SEMにより観察した結果、仮道管内に空気が入って通導が失われるのではなく、壁孔膜の閉鎖によって通導が阻害されることが示唆された。森林限界に特有の冬季の環境要因が壁孔膜の挙動に作用している可能性がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205708019840
  • NII論文ID
    130005167036
  • DOI
    10.11519/jfsc.127.0_93
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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