陸面過程モデルと河道流下モデルの結合方法に対する比較検討

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  • Comparison of how to connect between Land Surface Model and River Routing Model

抄録

洪水氾濫は陸域の水・熱の動態に大きな影響を及ぼす現象の一つである.陸面過程解析において,氾濫水域により放射収支・熱収支・水収支の各項目で顕著な変化が見られ,特に水資源量に関しては氾濫による蒸発損失により大きく低下するとされている.このことより,河道流下中の水収支の追跡だけでなく,氾濫水域の時空間的な拡がりまで評価することが求められる.本研究では,陸面過程モデルSiBUCおよび河道流下モデルを中心とした陸域水循環モデルを構築し,その両モデルの結合方法について比較検討を行った.結合方法は大きく3つに分かれ,まず1つ目は陸面過程から流出量を引き継ぎ,河道流下過程をKinematic Wave法で解く[-Kine]である.2つ目は[-Kine]と同様の変数を引き継ぎ,氾濫水域を考慮したCaMa-Floodとの結合,[-Cama]である.CaMa-Floodではサブグリッドスケールの地形情報をもとに,各グリッドの貯水量,水深,浸水面積の関係についてより現実的な考慮がなされており,計算単位となるグリッドでは,近接グリッドと不均一な面積となっている.また河道の運動方程式に局所完成方程式が用いられており,緩やかな勾配における水理量の高い再現性を有する.3つ目はSiBUCとCaMa-Floodの双方向結合である.CaMa-FloodからSiBUCに引き継ぐ変数は氾濫面積および地表面貯水量であり,これらによりSiBUCの初期パラメータである地表面状態も日々更新される.解析領域は赤道直下のビクトリア湖を主な源流とする白ナイル流域である.解析期間は流量実測データが得られた1979年から1982年である.白ナイルの大きな特徴としては,中流域に当たるSuddに大規模な湿地をもち,そこで河川が氾濫を起こしていることが挙げられる.この氾濫の影響が大きいとされる流域に,陸面過程モデルと河道流下モデルを3つの異なる結合方法で適用し,陸面過程解析結果および河川流量解析結果の結合方法間での比較を行った.その結果,両モデルの双方向結合により,氾濫水域における流出遅れの再現をしたことによる水資源の蒸発損失や地下浸透を考慮した解析が可能となった.それにより,これまでの解析において水資源量の発生域とされてきた流域が水資源の損失域になることを明らかにした.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205711674112
  • NII論文ID
    130005491851
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100039
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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