GCM出力の解像度が積雪水量推定に及ぼす影響

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  • Impact of the Resolution of GCM output on the Snow Water Equivalent Estimation

抄録

温暖化等の気候変動に大きな関心が寄せられている現在,それによる将来への影響評価があらゆる分野にわたって行われている.水資源に関しては,気候変動により雨の量や降り方,蒸発量が大きく変化すると考えられている.積雪地域での降雪量の減少に伴う積雪水資源量の減少や,融雪時期の早期化は,下流域の灌漑用水の利用に大きな影響を与えることが懸念されている.<br> 気候変動情報創生プログラムでは,MRI-AGCM3.2H(60km),MRI-AGCM3.2S(20km),NHRCM(5km)といった様々な解像度の全球大気モデルが提供されている.将来予測の不確実性を考慮すると,温暖化影響評価には多くのアンサンブル情報を有する60kmGCMを活かした解析が有効となる.しかし,日本のように山岳地が多い地域においては,60km解像度は地形の影響を十分に考慮できるとは言い難い.本研究では,相対的に粗い解像度のGCMを用いることが陸面過程解析における積雪水量の算定結果にいかに影響を及ぼすのか詳細に検討する.具体的には,20kmGCM出力値を60kmスケール(3×3)にアップスケールし,陸面過程解析を実施し,元の20kmスケール情報での解析との相違とその要因について分析する.特に,9メッシュ内の標高の絶対値や分散に着目する.さらに,60km解析結果を20km解析結果と同等と見なせるような補正方法についても検討する.解析期間は現在気候下(1979年~2003年),対象領域は日本全域とし,20km解像度でSiBUCによる陸面過程解析を実施する。<br> 60km解析結果は20km解析結果に比べ,全体的に小さく評価されることがわかった.60kmスケールの気温が相変化の閾値付近かつ9メッシュ内の標高の標準偏差が大きいところでは,アップスケーリングにより標高が平滑化された結果,雪が雨に変化してしまう可能性が高い。そのため,積雪水量が過小評価される場合が多いと考えられる.9メッシュ平均標高が300m~600mのグループおいては,重回帰分析の結果,20km解析結果に対する60km解析結果の比を,冬期降水量,9メッシュ内標高標準偏差,降水量重み付き冬期平均気温で概ね説明できた(決定係数0.92).<br> しかし,他の標高グループでは高精度の補正方法は得られなかった.今後地形の影響をより詳細に分析していく必要がある.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205711710208
  • NII論文ID
    130005491869
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100030
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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