氾濫解析に使用する衛星DEMの水文地理データを用いた補正

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  • Correction of Satellite DEM for Flood Analysis with Hydrogeological Data

抄録

洪水氾濫は陸域における水動態を表現する上で重要な現象の一つである.本研究の解析対象としているナイル川上流に位置するSudd湿地では上流域からの水が氾濫し,年間で86Gtに昇るとされており,河道流下中の水収支の追跡だけでなく,時空間的な氾濫の拡がりまで評価することが求められる.リモートセンシングの発展から全球をカバーする地形データが利用可能となってきている.これらは全球で整備されているという利点を持つ一方で,正のバイアスを持ったシステム誤差やランダム誤差を含んでいる.観測誤差を含むDEMを解析に用いた場合,想定される水の流れとは異なる結果が生じるため,現在に至るまで多くのDEM修正方法が考案されている.本研究では衛星DEMに対し,水文地理データを用いた外部補正による2種類のDEM修正を行った. 1つ目の補正手法はYamazaki et al.(2012)によって提案されたものを用いる(手法①).このアルゴリズムはHydrosheds(表面流向データ)用いて,上流より下流の標高が高い,すなわち水の流れの連続性を失わせるピットについて,「下流側の掘削」と「上流側の埋立」という2つの標高補正を行う.Suddでは氾濫原上にパピルスなどの植生が繁茂しており,衛星観測において本来水域である箇所が陸と認識され,標高に誤差が生じている可能性が考えられる.このことから本研究では手法①に加えて,さらに植生に加えて水深による標高誤差の正のバイアスの補正(手法②)を行った.まずGLWDにより陸域と氾濫域に区分し,手法②に関しては氾濫域のみを補正の対象としている.各グリッドは唯一の流出先となる河川グリッドを持つとし,河川グリッド標高を基準値として負の勾配が発生しないように補正した.DEM補正手法の有効性を確認するため,河川氾濫モデルCaMa-Flood[Yamazaki et al.,2011]を用いて氾濫解析を行った.修正されたDEMデータをそれぞれCaMa-Floodへの入力値とし,氾濫解析結果と全球湖沼マップとで氾濫の空間分布を比較した.手法①のみの場合と比較し,手法②を加えることでより観測に近い分布が見られたが,一致率に関しては改善の余地が見られる. 今後の方針として,氾濫原における負の勾配を認めた標高補正を行うことで,観測との一致率を向上させたい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205712009856
  • NII論文ID
    130005176071
  • DOI
    10.11520/jshwr.29.0_134
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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