陸面解析による灌漑取水とアラル海の消長に関するシナリオ分析~水資源の持続可能性向上へ向けて~

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  • Scenalio Analysis of Irrigation Water Withdrawal and the Aral Sea Shrinkage by Land Surface Analysis Toward the Sustainable Management of Water Resource∼

抄録

1. はじめに<br>今回は,アラル海面積を持続可能性評価の指標とし,1960年より水利用の改善が行われていた場合の効果を,複数の仮想的シナリオを用いて検証した.<br>2. 解析の流れ<br>まず,SiBUCによる陸面解析から流域全体・アラル海の水収支を計算する.アラル海周辺の標高データを基に縮小を再現し,土地被覆条件内の海領域を縮小させ,陸面解析の条件として使用している.同時に,各年の灌漑面積を統計データを基に修正している.この解析を1961からの40年間で行った.<br>3. 解析手法<br>モデルでは,①陸面過程モデルによるメッシュ内鉛直一次元解析,②流域水収支,③アラル海の水収支の三段階で解析を行った.流域水収支には運搬効率γが考慮されており,報告値である0.4を用いている.<br>灌漑手法:SiBUC内で二種類の灌漑手法を表現する.<br>畝間灌漑:中央アジアの灌漑地の90%以上で採用されている灌漑手法で,地表面に水を数時間湛水させることで根層に水を供給するため損失水量が多い.<br>点滴灌漑:灌漑地に張り巡らされたパイプより少量の水を頻繁に与えることで水の損失を防ぐ灌漑手法で,蒸発や浸透による水損失を防ぐことができる.<br>灌漑面積の拡大<br>灌漑面積拡大の影響を反映させるため,土地被覆条件を統計データを基に各年で修正した.<br>4. 過去の水収支の再現<br>今までの条件で過去の水収支の再現を行った結果,水資源量や灌漑必要水量の平均値は報告されている値と良く整合しており,アラル海縮小も含めて,流域の水収支を正確に再現できている.<br>5. シナリオ分析<br>シナリオは灌漑手法と運搬効率.灌漑面積に関して設定している.灌漑手法は点滴灌漑・畝間灌漑の比較である.運搬効率はγの値であり,灌漑面積に関しては,1960年からの40年間に開発された灌漑面積増加量に補正を加え,開発を抑制する効果について検討した.増加量に補正を加えたため,0%は1960年レベルの維持,100%は現状を意味している.各シナリオのアラル海面積の経年変化を確認すると,運搬効率の5%向上や点滴灌漑への転換の効果は非常に大きく,灌漑面積縮小シナリオでもアラル海面積の縮小をとどめており,効果的な対策ではあることがわかった. <br>6. 結論<br>本研究では,水利用に関する複数のシナリオ分析により,仮想的対策が流域の持続可能性向上に与える効果を物理的手法により推定することができた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205713039616
  • NII論文ID
    130004628346
  • DOI
    10.11520/jshwr.25.0.108.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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