ヤギ雄効果フェロモンに対するGnRHパルスジェネレーターの反応性の解析

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タイトル別名
  • Responsiveness of GnRH pulse generator to the male effect pheromone in goats

抄録

【目的】ヤギやヒツジでは雄効果という現象が知られており、成熟した雄が発するフェロモンが雌に作用し、その性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)分泌の頻度を上昇させる。本研究ではそのメカニズムを明らかにすることを目的とし、様々なタイミングでフェロモンを短時間呈示した際のGnRHパルスジェネレーターの神経活動の解析を行った。【方法】卵巣摘出ヤギの視床下部弓状核キスペプチンニューロン近傍の神経活動を多ニューロン発火活動(MUA)として記録した。2分前後継続するMUAの一過性上昇(MUAボレー)は常に血中黄体形成ホルモン濃度の上昇に先立つことから、GnRHパルスジェネレーターの活動を記録していることが確認された。フェロモン源としては成熟雄ヤギの被毛を用いた。まず、それぞれのヤギでMUAボレー間隔の平均値(T)を計算した。次に内因性のMUAボレーの発現から1/4T、1/2T、3/4T経過後フェロモンを約一秒呈示し、MUAの変化パターンを解析した。【結果】いずれの条件でも、フェロモン呈示直後に2秒程度続くMUAの瞬間的な上昇が観察された。この神経活動は弓状核へのフェロモンシグナルの伝達を反映していると考えられる。1/2T、3/4TではMUAは瞬間的な上昇後すぐに基底状態に戻り、数十秒後にMUAボレーが誘起された。MUAボレーが誘起される割合は1/2Tに比べ3/4Tの方が高かった。一方、1/4Tでの呈示ではMUAボレーはまったく誘起されなかった。【考察】本実験の結果から、フェロモンシグナルが弓状核キスペプチンニューロンに伝達されること、シグナル到達から神経活動の亢進までに数十秒のタイムラグを必要とすること、内因性のMUAボレーの後一定の間は、フェロモンシグナルによる神経活動の亢進がおきないことが示された。弓状核キスペプチンニューロンの神経活動は、共在するNeurokinin B (NKB)とDynorphin A (Dyn)に制御されていると推察されている(若林ら、大蔵ら)ため、フェロモン情報処理のメカニズムにNKB/Dyn系が関与している可能性が考えられる。本研究は科学研究費補助金(21228006)の一部として実施した。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205714071168
  • NII論文ID
    130007022408
  • DOI
    10.14882/jrds.102.0.1005.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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