卵子の品質維持に関わる新しいオートファジーの生理機能の解析

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タイトル別名
  • Autophagy is essential for oocyte quality control in mice

抄録

【目的】オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞質成分の大規模な分解系である。オートファジーの主な生理機能は栄養制御と品質維持に大別できる。オートファジーの活性は通常は低く保たれているが、受精直後には活発にオートファジーが誘導する。この誘導分は着床までのアミノ酸供給のために利用されると考えられる。実際に、この時期のオートファジーを欠損すると着床前致死となる。一方、活発に誘導されるオートファジーとは別に、低いレベルで起こる恒常的なオートファジーは細胞内で不要になった細胞質成分の除去のために必要である。受精前の未受精卵ではオートファジーの活性は低く抑えられており、卵子の品質維持にオートファジーが関与することが想定された。そこで、卵子の品質維持に恒常的なオートファジーが必須かどうかを検討した。 【方法】我々はオートファジーに必須な遺伝子Atg5を卵子特異的に欠損したマウス(卵特異的オートファジー欠損雌マウス)を作製した。このマウスを用いて、週齢ごとの卵巣切片の解析、排卵卵子のカウント、体外受精率と発生率の検討、野生型の雄マウスと一定期間同居させ産仔のカウントを行った。また、週齢ごとに回収した卵子を抗ユビキチン抗体と抗p62抗体で染色してタンパク質凝集体の蓄積の有無を観察した。さらに、電子顕微鏡を用いて超微細構造の観察を行った。 【結果および考察】卵特異的オートファジー欠損雌マウスは卵子形成や排卵は正常であった。そこで、週齢ごとに卵子を回収して体外受精を行ったところ、加齢に伴い受精率が低下することが分かった。次に、抗ユビキチン抗体と抗p62抗体を用いて卵子を二重染色したところ、加齢依存的にユビキチンとp62陽性のタンパク質凝集体が蓄積することが明らかとなった。さらに、電子顕微鏡観察からオートファジー欠損卵子には脂肪滴が多く観察された。以上の結果から、恒常的なオートファジーは細胞内成分を代謝回転させることで不要成分の蓄積を防止しており、この役割が卵子の品質を維持するのに重要であることを示唆している。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205714260480
  • NII論文ID
    130007022612
  • DOI
    10.14882/jrds.102.0.102.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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