始原生殖細胞(PGC)は貴重家禽の遺伝資源の保存に有効か?
書誌事項
- タイトル別名
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- Are primordial germ cells (PGC) effective for the preservation of precious chicks' genetic resources?
説明
【目的】ニワトリの遺伝資源の保存方法として精液の凍結保存技術は確立されているが、卵子を長期保存する技術はまだ確立されていない。一方、各国から鶏インフルエンザの流行が報告されており、鳥類の遺伝資源保存は国際的な緊急課題である。始原生殖細胞(PGC)は生殖細胞の前駆細胞であり、他品種に移植することで生殖系キメラを介してその種を復元することができる。本研究では様々な感染症による絶滅からニワトリの遺伝資源を守る一つの方法として、様々な地鶏や野鶏のPGCを採取後凍結保存し、PGCバンクとしての有用性を検討した。<BR>【方法】野鶏3品種(赤色野鶏、金鶏、銀鶏)および地鶏6品種(岩手地鶏赤笹、白笹、岩手大型ロード、南部かしわ基礎鶏、純系会津地鶏、比内鶏)の有精卵を6日間孵卵し、PGCを含む生殖隆起(GR)懸濁液を凍結保存した。その後、各鶏種3個体ずつを融解し細胞の生存率を測定した。生殖系キメラ作出の可能性を検討するため、融解した細胞を7日間培養しPKH-26で蛍光標識後PGCを選択的に採取し、白色レグホン(WL)の胚盤に移植した。孵卵6~9日目に凍結切片を作製し、蛍光顕微鏡下で観察した。また、各個体ごとにDNAによる性判別も行った。<BR>【結果および考察】凍結したGR懸濁液の細胞生存率はいずれの鶏種も70%前後であり、移植に使用可能と判断された。融解細胞を培養した結果、正常に増殖することを確認した。また、蛍光標識したPGCを移植したWLのGRを観察したところ、6~9日目すべての胚で蛍光が観察された。地鶏の生殖系キメラは当研究室でも作出されているが、野鶏のPGCを用いた生殖系キメラは未だ成功例はない。本研究で孵卵9日目まではドナーPGCが生存し、正常にレシピエントGRへ移動していることから、今後成功する可能性はある。以上のことから、凍結したPGCは感染リスクを回避するための保険および感染後の復元に有効である。特に飼育域が限定される地鶏や繁殖力の弱い野鶏では、本法による早急な遺伝資源の保存が必要である。
収録刊行物
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- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
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日本繁殖生物学会 講演要旨集 102 (0), 1077-1077, 2009
公益社団法人 日本繁殖生物学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205714297728
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- NII論文ID
- 130007022650
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可