マウス顕微授精における精子処理が受精,胚発生および染色体正常性に及ぼす影響
書誌事項
- タイトル別名
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- Effects of sperm pre-treatment on fertilizability, developmental competence and chromosomal integrity following intracytoplasmic sperm injection in mice
説明
【目的】顕微授精(ICSI)では,精子を卵子内に人為的に注入するため受精能獲得や先体反応を起こしていない精子でも受精卵を作出することができる。しかし,このような非生理的な状態の精子を体外胚生産に使用することの安全性は未だ確認されておらず,体内で起こる現象を再現した体外胚生産が望まれる。そこで本研究では,受精能獲得や先体反応を体外で誘起する精子処理がICSI後の受精,胚発生および染色体正常性に及ぼす影響を検討した。また同時に,精子処理として頻繁に用いられるdithiothreitol (DTT)処理の影響についても検討した。【材料と方法】実験には7-12週齢のB6D2F1マウスを用いた。精子をmethyl-β-cyclodextrin (MBCD: 1 mg/ml, 90 min),lysolecithin (LL: 0.02%, 1 min), Triton X-100 (TX: 0.02%, 1 min)およびDTT (5 mM, 30および60 min)で処理し,直ちにICSIに供試した。その後,受精率,分割率および胚盤胞発生率を観察した。さらに,第一有糸分裂期および胚盤胞期の受精卵(胚)の染色体正常性を調査した。【結果】第一有糸分裂期における染色体正常性は,精子処理を施すことにより対照区と比較して有意に減少した(87% vs. 17-69%: P<0.05)。特にDTTで60 min処理することで染色体正常性は大きく損なわれた(17%)。一方,受精率(87-97%)および発生率(71-89%)は,対照区と比較して有意な差は見られなかったが,DTT 60 min区の胚盤胞の染色体正常性は対照,MBCD,LLおよびTX区より有意に低率であった(23% vs. 66-79%: P<0.05)。以上のことから,精子処理はたとえ短時間であっても精子染色体異常を誘起し,過度な処理の場合,その異常は胚盤胞まで保持されることが明らかとなった。さらに,その異常を着床前の胚発生率で予測することは困難であることが示された。
収録刊行物
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- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
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日本繁殖生物学会 講演要旨集 101 (0), 517-517, 2008
公益社団法人 日本繁殖生物学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205714536064
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- NII論文ID
- 130007022941
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可