黒毛和種経産牛における超音波検査を併用した新規定時人工授精プロトコールの開発

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抄録

【目的】乳牛と同様に黒毛和種牛においても排卵同期化処置による定時人工授精が応用されているが,投与に要するコストや労力の点で改善の余地がある。一方,牛の臨床現場において携帯型の超音波機器の普及が進み,より客観的に機能性黄体の有無を判断できるようになった。そこで我々は超音波検査により機能性黄体を有する個体に対する新規プロトコールの有用性を検討したので報告する。【方法】供試牛として分娩後40日以上を経過した黒毛和種経産牛132頭を用い,超音波検査で直径20 mm以上の黄体を確認した個体にクロプロステノール(PG)を投与(H0)し,任意の2群,すわなちPG投与の56時間後(H56)に酢酸フェルチレリン (GnRH)を投与,その16時間後に定時人工授精した群(ショートシンク 処置群)と,PG投与後は無処置として発情発見後にAM-PM法により人工授精した群(対照群)に分けた。両群とも H0,H56に血漿中プロジェステロン(P4)濃度を測定した。両群間におけるH0,H56およびH96時の卵巣動態と,その後の発情徴候発現の有無を観察し,排卵同期化率と妊娠率をカイ二乗検定により比較し,処置群においては発情発見の有無による排卵同期化率と妊娠率を比較した。【結果】H96での排卵同期化率は処置群(89%)が対照群(33%)よりも高かった(P < 0.001)。処置群は発情徴候を示した個体の排卵同期化率(97%),妊娠率(66%)が発情徴候を示さなかった個体の排卵同期化率(85%),妊娠率(48%)と比較して高かった。超音波検査で20 mm以上の黄体を有する個体の97%においてP4濃度が1 ng/ml以上で超音波検査により機能性黄体の確認が可能であった。処置群の妊娠率(53.3%)は対照群(47.2%)と同等であった。結論として超音波検査を併用するショートシンク法が黒毛和種経産牛の生産率向上を実現する新たな手法として臨床応用可能なことが示唆された。

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  • CRID
    1390001205714867200
  • NII論文ID
    130005475091
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or2-36
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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