ナノ粒子は妊娠マウスの胎盤炎症と妊娠機能異常を引き起こす:自然炎症経路・インフラマソームの関与

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抄録

【目的】ナノ粒子は次世代を担う新規素材であるが,生体内の異物排除を担う免疫担当細胞がナノ粒子を認識した際に,過剰反応や未知の免疫撹乱作用を起こす可能性が指摘されている。近年,無菌性の炎症を惹起するインフラマソームが注目されており,珪肺症などの炎症性疾患はナノ粒子が危険シグナルとしてNLRP3インフラマソーム機構(NLRP3・ASC・Caspase1複合体)を活性化することが要因であると分かってきた。本研究では,妊娠マウスモデルを用い,ナノ粒子(70 nm)による母体と胎児を含む妊娠機構に与える影響と自然炎症・インフラマソームの役割について検証した。【方法と結果】野生型の妊娠マウス(プラグ確認後13日目)の尾静脈からナノ粒子(ナノシリカ)を投与すると,母体の体重減少に伴い高い胚吸収率および胎仔低体重が誘発された。ナノ粒子を投与すると胎盤内に好中球が集積し,ナノ粒子を貪食した。また,胎盤内では炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-1β,IL-1αおよびインフラマソーム構成分子の発現が刺激された。インフラマソーム構成分子のASCを欠損した妊娠マウスでは,ナノ粒子誘導性の妊娠機能異常は改善されず,胎盤内IL-1α分泌が野生型よりも著しく増加した。一方,NLRP3欠損マウスでは胎盤内IL-1α分泌は増加せず,抗炎症性サイトカインIL-10の増加に伴いナノ粒子誘導性の妊娠機能異常が軽減された。単離した胎盤細胞および好中球にナノ粒子を添加すると,IL-1βおよびIL-1α分泌が刺激され,活性酸素種の産生が増加した。これらの細胞に対し酸化ストレス阻害剤を処理することで,ナノ粒子誘導性の炎症性サイトカイン分泌が軽減された。以上から,妊娠マウスにナノ粒子を投与すると胎盤で過剰な炎症が起きることで妊娠機能異常が誘発されることが分かった。この機能異常はインフラマソームではなくNLRP3分子依存的であり,NLRP3が炎症・抗炎症サイトカインバランスを調節することが示唆された。

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  • CRID
    1390001205714875264
  • NII論文ID
    130005475098
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or2-27
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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