黒毛和種雌ウシにおける繁殖性バイオマーカーとしての血中抗ミューラー管ホルモンとインスリン様成長因子1の有用性の検討

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抄録

【背景】黒毛和種雌ウシの分娩後の繁殖性を予測するバイオマーカーに関する報告は少ない。抗ミューラー管ホルモン(AMH)は卵巣予備能に,インスリン様成長因子1(IGF-1)は卵胞発育に関わっている。本研究では,分娩前後の黒毛和種雌ウシの血液中のAMH,IGF-1の動態を明らかにし,分娩後の繁殖性のバイオマーカーとしての有用性を検討した。 【材料と方法】1農場で飼養されている黒毛和種雌ウシ12頭(4–13産,平均6.8産)を供試した。通常はフリーバーン牛舎で,分娩前7日から分娩後28日は分娩房で飼養し,分娩後4カ月間は子牛による自然哺乳とした。発情発見後に人工授精(AI)を行ったが,分娩後63日までにAIされなかった牛は排卵同期化により定時AIを行った。分娩の-9週(-9w),-4週(-4w),-2週(-2w),分娩後6日以内(0w),分娩後2週(2w),4週(4w)に採血し,血中AMH,IGF-1,プロジェステロン(P4)濃度を測定した。分娩後,1週間間隔で超音波検査を行い,黄体の確認と血中P4濃度が1ng/ml以上だった週を発情回帰とした。分娩後の繁殖性として,初回AI日数,初回AIの受胎性,受胎までのAI回数,空胎日数を記録した。 【結果】平均血中AMH濃度は,-9wの0.10 ng/mlと-4wの0.07 ng/mlが-2wから4w (0.05–0.06 ng/ml)よりも,平均血中IGF-1濃度は,-9wから0w (79.0–115.4 ng/ml) が2wと4w (それぞれ56.9,55.2 ng/ml)よりも,有意に高かった。血中AMH濃度は各週のすべての間で有意な相関 (r = 0.65–0.96)がみられ,血中IGF-1濃度は-9wと-4w,0wと2wおよび4w,2wと4wに有意な相関(r = 0.66–0.86)がみられた。各週の血中AMHおよびIGF-1濃度と発情回帰,初回AI日数,受胎までのAI回数,空胎日数との相関は,0wの血中IGF-1濃度と空胎日数(r = –0.63)に有意な相関がみられた。また初回AIで受胎した牛は不受胎だった牛に比べ0wのIGF-1濃度が有意に高かった。 【結論】本研究では,黒毛和種雌ウシにおいて,分娩後6日以内の血中IGF-1濃度が分娩後の繁殖性の有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。

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  • CRID
    1390001205714894976
  • NII論文ID
    130005051090
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or2-36.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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