マウス発育前卵母細胞におけるコヒーシンサブユニットRAD21LおよびRAD21の発現解析

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抄録

【目的】コヒーシンは,姉妹染色分体の接着に主要な役割を果たすタンパク質複合体である。最近,そのサブユニットの1つRAD21の減数分裂特異的なパラログとしてRAD21Lが発見された。RAD21Lをノックアウトしたマウスでは,雄は完全な不妊,雌は加齢に伴い不妊となることが報告されている。減数分裂におけるコヒーシンの異常は,先天性疾患や不妊の一因となると考えられるため,その発現や制御機構を調べることは重要である。しかし,機能的な雌雄差が報告されているにも関わらず,既報の減数分裂におけるコヒーシンの発現解析のほとんどが精母細胞を対象としており,卵母細胞における報告は少ない。したがって本研究では,胎児期から新生児期の卵母細胞において,RAD21LおよびRAD21の詳細な発現時期を明らかにすることを目的とした。【方法】実験には胎齢12.5から生後0.5日齢のC57BL6/J系統のマウスを用いた。卵巣の凍結切片を作製し,1%パラホルムアルデヒドで固定した。切片を抗RAD21L抗体あるいは抗RAD21抗体で免疫染色し,両者の発現パターンを比較した。その際,減数分裂期に特有なシナプトネマ複合体の構成分子であるSYCP3に対する抗血清で共免疫染色し,減数分裂期の細胞を識別した。核をDAPIで対比染色した後,サンプルを封入し,共焦点レーザ顕微鏡を用いて観察した。【結果】RAD21L は,シナプトネマ複合体のaxial elementが形成されるレプトテン期以前の減数分裂初期の段階から核内に存在し,シナプトネマ複合体の形成とともにその軸上に集積した。そしてシナプトネマ複合体の形成が完了したパキテン期の中頃から徐々に消失することが明らかとなった。一方RAD21は,体細胞では常に核内に発現していたが,減数分裂期の卵母細胞では発現が確認されなかった。この結果は雄における発現時期と同様であった。それゆえ,RAD21L欠損による雌雄差は,雄におけるRAD21Lの役割を卵母細胞では他の分子が相補できることによるのかもしれない。

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  • CRID
    1390001205715022080
  • NII論文ID
    130005051141
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-15.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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