低栄養による繁殖抑制を担う脳内エネルギーセンシングメカニズム

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【目的】低栄養状態の動物では性腺機能は抑制される。これまで我々は,後脳上衣細胞は個体の低栄養状態を感知し性腺機能を制御するエネルギーセンサー細胞であると提唱してきた。本研究では,エネルギーセンシングの細胞内メカニズムの解明を目的とし,肝臓や脂肪組織においてエネルギーセンシングシステムの最上位調節因子であるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)に着目した。AMPKは,細胞外グルコース濃度低下などの低栄養状態において細胞内AMP/ATP比の上昇により活性化され,転写因子等をリン酸化することで下流シグナリングを亢進する。そこで本研究では,AMPKの活性化が後脳上衣細胞による低エネルギー感知を仲介すること,さらにこのAMPK活性化が性腺機能を抑制することを検証した。 【方法】後脳上衣細胞の機能をin vitroにて機能解析するため,上衣細胞で蛍光タンパク質(Venus)で可視化したトランスジェニック(Tg)マウスを新たに作出した。本Tgマウス由来の可視化上衣細胞初代培養系を用い, [Ca2+]i変化を指標としAMPK活性化剤であるAMPアナログ(AICAR)への応答性を検討した。次に上衣細胞マーカーであるヴィメンチンと活性型AMPKであるリン酸化AMPKの二重免疫染色を行った。さらに,雌ラットの第4脳室にAICARを投与し,黄体形成ホルモン(LH)分泌動態の解析をした。 【結果】Venusで可視化された一部の後脳上衣細胞において,AICARによる[Ca2+]i上昇が認められた。また,第4脳室および一部の中心管の上衣細胞にリン酸化AMPKの発現が確認された。さらに AICARの第4脳室内投与によりパルス状LH分泌が有意に抑制された。以上の結果から,後脳上衣細胞はAMPKの活性化による[Ca2+]i上昇を介して個体の低エネルギー状態を感知し,パルス状LH分泌の抑制を引き起こすことが示唆された。本研究成果は,後脳上衣細胞のAMPKシグナリングをターゲットとした繁殖制御剤開発への応用が期待される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205715030016
  • NII論文ID
    130005475172
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or2-12
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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