Swainsonine の糖鎖合成阻害によるウシ黄体機能への影響

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抄録

(目的) Swainsonine (SW) は,ゴルジα-マンノシダーゼの阻害剤であり,複合型糖鎖の合成阻害剤である。SWはロコ草と呼ばれる,いくつかの有毒植物から単離された。ロコ草の摂取は家畜に対して,ロコ病として知られている毒性症候群をもたらす。その症状としては運動失調,抑うつ症,過剰興奮性,粗い被毛及びるいそう症などである。また,ロコ草の長期摂取は家畜の生殖機能に深刻な障害を起こす。雄では繁殖行動及び性欲に影響を及ぼし,雌では妊娠の失敗,初期胚損失または流産を引き起こす。しかし,SWの生殖機能に対する作用機序は不明な点が多い。特に,SWの糖鎖合成阻害作用による生殖機能に対する影響は明らかでない。そこで,本研究ではウシ黄体に対するSWの影響を明らかにするために,SWの糖鎖合成阻害作用に着目し,SWの黄体での糖鎖合成に対する影響を調べるとともに黄体機能に対する影響を調べた。(方法)1. SWによるウシ黄体の糖鎖合成に対する影響を,SW添加後の培養黄体細胞を用いてレクチンブロットにより調べた。2. SWによる培養黄体細胞の生存率に対する影響をMTT assayにより調べた。3. SWによるウシ黄体のprogesterone (P4) 産生に対する影響を,24時間SW処理後の培養黄体細胞に黄体形成ホルモン(LH) を添加し,EIAにより調べた。(結果) 1. 0.1 μg/ml以上の濃度のSWはウシ培養黄体細胞の糖鎖合成を阻害した。2. SWは培養黄体細胞の生存率を変化させなかった。3. LH処理による培養黄体細胞のP4分泌の増加は,SWによって抑制された。(まとめ) ロコ病の症状を呈する家畜において,血中のSWレベルは0.1 μg/ml前後であることが報告されている。この濃度のSWにおいて培養黄体細胞は糖鎖合成が阻害され,生存率に変化はないが,LHによるP4分泌の増加を抑制することがわかった。これらの結果から,SWはLH受容体の糖鎖構造を変化させることにより,LHのLH受容体を介したP4分泌作用に影響を及ぼしている可能性が示された。

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  • CRID
    1390001205715315072
  • NII論文ID
    130005475205
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_p-44
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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