酸化ストレスによる染色体異数性誘発卵における紡錘体形成チェックポイントタンパク質BubR1の発現動態

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抄録

【目的】減数分裂過程で起こる卵の異数性は,動原体-微小管結合の異常や動原体の早期分離の結果として起こり,この原因として,紡錘体形成チェックポイント(SAC)機構の異常やコヒーシンタンパク質の発現異常などが挙げられている。我々は,成熟培養(IVM)系で高頻度に異数性を引き起こす抗酸化酵素SOD1遺伝子欠損マウス(KO)卵をモデルに,酸化ストレスによる異数性発生機序の解明を行っている。本研究では,特にSOD1KO卵におけるSAC構成因子であるBubR1の発現量および局在の解析を行った。【方法】若齢(3–4週齢)または老齢(12ケ月齢)のICR系野生型(WT),SOD1KOマウスから卵核胞期卵を採取し,20% O2下でIVMを行った。続いて,BubR1抗体を用いてIVM 0–18時間の卵で,ウエスタンブロット解析,第一および第二減数分裂中期(MIおよびMII期)卵で,蛍光免疫染色による発現局在解析および動原体間距離の測定を行った。一方,それぞれの卵のMII期異数性パターンを分類した。【結果および考察】BubR1の発現量は,減数分裂の進行に伴って増加し,WT卵ではIVM 8時間で,SOD1KO卵ではIVM 6時間でピークを迎え,その後減少した。また,BubR1の局在はMIおよびMII期の動原体上にみられ,このシグナルを基に測定したMII期の動原体間距離は,WT卵と比較し,SOD1KO卵で有意に増加していた。SOD1KO卵の異数性頻度は,若齢-排卵卵子(6%),若齢-IVM卵(35%),老齢-IVM卵(67%)の順に増加傾向がみられた。これらの卵では,19対+2染色分体の異数性パターンが多くみられたが,老齢-IVM-SOD1KO卵では,21対の異数性パターンが増加していた。以上より,IVM系でのSOD1欠損による酸化ストレスは,BubR1の発現量および局在に大きな異常を及ぼさないものの,動原体間距離の増加がみられることから,動原体間接着に関わるコヒーシンタンパク質の減少を誘導する可能性が考えられた。

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  • CRID
    1390001205715350016
  • NII論文ID
    130005051059
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.or1-8.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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